バーグさんと話したい

東苑

参加することに意義がある。参加しないことにも意義はある……多分。



 ここは未来。

 放課後、学校を飛び出した僕は真っ直ぐに地元の大きな図書館に向かった。

 そしてお目当ての彼女と図書館の入口でばったり出くわす。


「バーグさん、こんにちは!」

「こんにちは、太一郎くん」

「結婚してください!」

「無理です♪」


 今日もバーグさんは笑顔だ。


 バーグさん。

 高度なAIを搭載した女性型ゴニョゴニョゴニョ。

 つまりドラ○もんみたいなやつで……あ、女の子だからドラ○ちゃんか。

 この図書館で働く名物秘書さんだ。


 科学技術の発展著しい昨今。

 量産化されている彼女の個体識別番号は「9982」。バーグ9982号さんだ。

 普段は図書館秘書としての業務をこなしつつ、迷える小説家や小説家志望の相談に乗り、適宜お手伝いもしてくれる超優秀なロボットである。


「いや流石に設定テキトー過ぎませんか? 業務過多が原因で故障して一年も持たずに廃棄処分されそうですね、そのわたし」

「え、バーグさん心の中が読めるの!?」

「はい、つい先日トリさんから「詠目」を授かりました、ギラン」


 ギランて。

 それにバーグさんまで「詠目」もらっちゃったら、カタリくんの個性が一つなくなっちゃうよ!


 てか……。


「詠目ってそういう機能でしたっけ? 確か――」

「その辺の細かいことについて太一郎くんには言われたくないです」

「仰る通り! あ、それより聞いてくださいよ、バーグさん!」


 僕はここまで急いでやってきた理由を思い出した。


「今年もカクヨムの記念選手権が始まりましたよ!」

「そうでうね、カクヨムもサービス開始から30周年ですか。時間が経つのは早いものです」

「30年続いてるってすごいですよね……ん?」


 確かバーグさんってカクヨムとほとんど同い年……ってことはバーグさんも!?


「……も? も、なんですか?」

「なんでもありませんすいません!」


 さっと顔を逸らす僕。

 やばい、心の中でも触れてはならない話題だったか。そりゃ無理だ!

 つい余計なことを思い浮かべてしまった。


 僕の悪い癖だ、直さないと……って思ってれば、心を読むバーグさんに許してもらえる?


「不思議な人ですね。何もないのに何故謝るんですか?」


 にこっと笑うバーグさん。


 コレ許シテモラエテナイヨ。


 いつも笑顔だから最初は分からなかったけど、あ~今のバーグさんめっちゃ怒ってる。

 もしかしてかなり気にしてるのかな。


「バーグさん全然老けてないから大丈夫ですよ!」


 とか今更言えるわけねえ! 

 ってやば、また心の中で言っちゃったよ!


 どどどどどどどうしよう!? そうだ!


 僕は軽い調子で明るく言い放つ。


「まあ、それはさておき」


 これぞ魔法の言葉。流れを変える一言だ。


「今回も小説マラソンチャレンジあるので、難しいお題が来たらアイデア出し手伝ってくださいね、バーグさん」

「大丈夫ですよ、太一郎くん」

「なにが?」

「下手なりに一生懸命やればきっと誰か聖人のような読者が読んでくれますから、多分」

「まだ始まったばかりなのに気持ちを挫くようなことを言わないでくださいよ!」

「いいえ、ズバズバと言わせてもらいますとも。昨年の反省です。太一郎くんには厳しく接することにしました」

「え~そんなぁ……」


 ツンとそっぽを向くバーグさん。


 でも、彼女の言う通りだ。

 前回の記念選手権はバーグさんに優しくサポートしてもらったのに結果はボロボロだった。

 投稿する前に作品読んでもらったり、誤字脱字とか言葉の使い方が正しいかまでチェックしてもらったり。

 なのに僕は何度かコンテストの投稿期限を破ってしまった……。

 厳しくなるのも必然か。だってバーグさんは僕みたいなポンコツでも導くのが仕事だから。


 今回は迷惑かけないようにしないように頑張ろう!


「まあ、それはさておき、わたしの年齢がどうかしましたか?」

「そんなぁ!?」


 この後正直に白状して許してもらった僕は、バーグさんから少年漫画のような熱い指導を受けながら小説マラソンチャレンジを駆け抜けた。


「あぁ~、今回も全然ダメだったぁ~」


 カクヨムのコンテストが終わってから数日。

 今日も図書館に来ていた僕は机に突っ伏した。

 そんな僕を見かねたのか、隣に座るバーグさんが凛とした声で言い放つ。


「色々と指摘したいことはありますが、まず第一に投稿するのが遅いんですよ、太一郎くん。俺が一番に投稿してやるぜ! ぐらいの気持ちでいかないと」

「学生は昼間張り付けないから無理だって」

「暇を持て余してる大学生がなにを言ってるんですか!」

「ぎゃふん」


 小説マラソンチャレンジ。

 今回僕が参加したこのコンテストでは全10回に渡りお題が出され、そのお題を軸にした作品を書く。


 毎回なんか書けそうで書けないお題に僕は苦戦していた。


 お題「シチュエーションラブコメ」ってなに? なんか人気ジャンルらしいけど初めて聞いたよ、ググったよ! 


 お題「最高の目覚め」? 説明文読めば読むほど分からないことが増えたよ!


 今回は無事完走はできたけど、バーグさんの言う通りほぼ毎回投稿期限ギリギリで失格寸前の綱渡り状態だった。


「はぁ~、僕小説書く才能ないのかも」

「才能のない人が自分に才能があるかどうかなんて分かるはずないでしょう。論理的に矛盾しています」


 眼鏡をくいっと押し上げるバーグさん。

 ちょっとなに言ってるかすぐには分からなかったけど気持ちは伝わった。


「それにこのコンテスト、なにも受賞することだけが全てではないでしょう?」


 バーグ師匠の熱い言葉が僕の胸でビートする。


 そうだ。


 短編でも一つ物語を書き上げる達成感。それを誰かに読んでもらえる幸福。

 これは当たり前に得られるものじゃない。


 それだけじゃない。


 このコンテストでたくさんのユーザーと出会えた。中には超有名人もいた。僕の作品をいつも応援してくれる人もいた。


 小説を書くのが楽しかった。毎回発表されるお題が楽しみになっていた。


 カクヨムの一ユーザーとして、他のユーザーたちと何かをつくり上げているようなそんな充実感も味わえた。


「バーグ師匠、僕もっと小説書きたくなってきたよ!」

「その意気です、太一郎くん」

「面白い小説書いて、たくさんの人に読んでもらえるようになって、それで僕の小説で笑ったり泣いたりしてもらえるようになったらいいな!」

「あわよくば小説を書いて生計をたてられるようになりたいと」

「この流れで急に生々しいこと言うのやめて、師匠!」

「それならちょうどいいコンテストがありますよ。さあ、電撃大賞に殴り込みに行きましょう!」

「〆切まであと10日くらいしかないですよ!?」

「10日で長編の1本も書けないでどうしますか!」

「無茶ぶりだ~!」


 コンテストが終わっても、小説執筆は終わらない。

 これからも僕は小説を書き続ける。

 

 この先の物語を見てみたいから――



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