第28話 サバイバル訓練?
「おい。取り敢えずお前は何歳なんだ? 俺に仕えるって言うからには、
ハースグランにおいて、魂の石版を他人に見せる行為は避けられている。なので、基本的には身内や信頼のおける相手以外には見せない。
俺がカティナママンにしか見せないのは、シルフェを信頼していない訳じゃなくて命令されたからだけどね。
この返答次第で、ファブの俺に対する虚偽が多少見抜けるだろうと思ったんだけど、無駄だったみたいだ。
既に見て欲しそうに自らステータスを晒してる。ーー阿呆確定。
「うっす! おいらのレベルはまだ低いっすけど、力だけは自信があるっすよ」
「シルフェも見て良いぞ。どれどれ……?」
「はい。お言葉に甘えまして……」
__________
【ファブ・ガイアス】
種族:竜人族
年齢:8歳
Lv:13
HP:6570(521)
MP:804(124)
力:2270(202)
体力:1480(95)
敏捷:704(62)
魔力:78(8)
精神力:140(22)
【スキル】:体術、剣術、豪腕、捕食、龍眼、魔力転換、MP転換、内臓強化、鋼体化。
【称号】:大地龍の加護、大地母神の加護、力の申し子、大食漢。
【装備】
『大地龍の籠手:物理攻撃ダメージ上昇(極)国宝級』
『土龍のシャツ:物理防御上昇(中)上級下位』
『土龍の短パン:物理防御上昇(中)上級下位』
『土龍のブーツ:敏捷上昇(中)中級上位』
【神格保有数】:1
『
『大地龍の加護』→土属性の攻撃耐性上昇(極)、土魔法の習得補正率上昇(極)、ステータス成長補正(大)
『大地母神の加護』→HP、力、体力の成長補正(極)、農業成功率上昇(極)、物理ダメージ上昇(大)
『力の申し子』→力のステータスが強くなればなるほど、魔力の成長率が減少する。周囲の者への影響は皆無。
『大食漢』→美味い肉を食えば食う程、ステータスの最大値が上昇する。一度食べた肉に効果は発揮しない。不味い肉を食うと、一定時間空腹状態が続く。
__________
「ど、どうっすかぁ⁉︎」
俺達のリアクションを見て、ファブは少し不安そうに狼狽えていた。
「確かに凄いんだけどさ……」
「そうですね……何て言うか」
ーー偏り過ぎだろ!!
(何? 何なのこの脳筋のスペシャリストを作り上げる為に裏付けされたとしか思えない加護は⁉︎ しかも神格保有者じゃん! この『
俺は激しく会ったことも無い神様に一通りツッコミを入れた後、深呼吸してファブに向かい合った。
何でだろう。さっきまでウザくて仕方ないクソ餓鬼だと思ってたけど、今は仲間意識が芽生えてるよ。
神様の加護の代償、辛いよな。
俺は金。お前は魔力。お互い大変だけど、頑張ろうな?
「じゃあ、そう言う事で厳正なる選考の結果、誠に残念ながら今回は採用を見合わせて頂く事になりました。ーー元気に生きろよ!」
「「うぇええええええええっ⁉︎」」
俺が微笑みながら選考の結果を告げると、ファブだけじゃなくてシルフェまで驚きの声を上げた。どうしたんだろうね?
「今、なんか凄い優しい顔してたじゃないっすか⁉︎ そこは採用の流れじゃないんすか⁉︎」
「そ、そうですよ! 確かに
シルフェ、お前は一体どっちの味方なんだよ。これ以上子供が増えて、ここが動物園みたいにうるさくなったらやだろ?
俺はやれやれと肩を竦めつつ、困惑する二人に理由を述べてやった。
「あのな。馬にも早熟馬と晩成馬がいるだろ? ファブは明らかに若い内に限界を迎える。多分だけど、カティナママンが俺の魔力を伸ばそうとしているのは、元々俺に武術の才能があるのを知っているからだ。『魔気融合』を更なる段階に飛躍させる為に、今は俺の刀を封じてる」
「……」
「……」
俺の言いたい事に気付いたみたいで、ファブは青い顔をしていた。俺は説明を続ける。
「魔力は魔法だけじゃなくて、あらゆるスキルや能力を生み出す為に使用される。幾らステータスが高くても、ファブは一生力自慢でさえ、俺には叶わないさ」
ーーパンパンッ!
「はいはい〜! グレイちゃん、そこまでで一旦止まりましょうねぇ」
「ママン?」
俺の説明を中断するかの様に手が鳴らされた後、リビングにカティナママンが入って来た。
少し疲れた表情を浮かべているけど、大丈夫かな?
「初めまして。私が神龍の巫女、カティナです。貴方は大地龍様の遣いで間違い無いのよね?」
「はいっす。この度の地の縄張りの非礼を精一杯謝罪し、許しを得られたのならグレイズ様にお仕えする様にじっちゃんに言われたっす」
「そうねぇ。グレイちゃんが『
「それも聞いたっす。おいら自身で見極めろって言われたんすけど……叶いそうにないっすね」
哀しげに瞳を伏せるファブを、突然カティナママンは抱き締めた。
俺は腕を組んで様子見していたが、一瞬で嫉妬の炎が燃え上がり、ヤダヤダと無言で頭を振る。
「これくらいで嫉妬しないの。あのね、グレイちゃん。大地龍様はこの度の件に関して、とても反省しているのよ。だから、加護を与えたとても大切な愛しい孫にここへ赴く様にお願いしたんでしょうね」
「……でも、そいつは強くなれないよママン」
「グレイちゃん。そうやって冷静に未来を判断しちゃダメ。少なくとも私は貴方にそれを教えられたわ。だって、
俺が無言で俯いていると、シルフェがそっと手を握ってくれた。そのまま耳元で囁いてくる。
「大丈夫ですよグレイ様。それならファブをテストすれば良いんです。その結果次第で判断すれば、きっと巫女様も納得されます」
「う〜ん。まぁ、その意見を採用する」
さっきまでファブ側だと思ったら、いきなりテストとか言い出してどうしたんだろう?
シルフェの方が思ったより冷静なんだろうか。
「……食費の倍増、私の食事が減少、何としても奴を追い出さなければ、家計が圧迫されてしまうのです」
全然違った。まぁ、メイドとしては正しい判断か。まだファブの食いっぷりを見てないけど、称号が付く位だから、凄まじい気がするな。
「聞こえましたよ。それなら丁度二人にお願いがあったから、ファブにも手伝って貰いましょうか」
「「「??」」」
カティナママンは『
あっ、これ嫌な予感がする。
「どうやら『
おぅふっ! 凄いやママン。普通の三歳児ならって言いたい事は色々あるけれど、そんな満面の笑顔で言われたら俺の答えは決まってる。
ちなみに前回ギルムの里に行った時の買い出しリストを見ていて、シルフェと俺は大体サバイバルさせられるんだって予想が付いていた。
「因みにママン、いつから?」
「えっ? 今からよ?」
ーーですよね! その、何を言ってるのかしらこの子? みたいなキョトンとした視線を向けて来る感じも堪んないっすわ。カティナ大佐の命令は絶対です!
「んじゃ、行くぞ。ついて来いチビ助、小娘」
「よっこらせっと! ほらファブもリュック背負ってね。グレイ坊っちゃまに置いて行かれるよ」
「え? えぇ? おいら全然状況が把握出来てないっすよ⁉︎ 何でシルフェさんはそんなに淡々としてるんすか⁉︎」
「生きているとね、もっと心を壊される事が沢山あるからだよ……」
「ふ、深いっす……」
おぉ、良いこと言うなぁシルフェ。これならもっと日々の鍛錬のレベルを上げても良さそうな気がする。新しい罰も考えておこう。
「いってらっしゃ〜い!!」
手を振るママンを後に、俺達は霊水を求めて『魔陰の森』攻略を開始した。
カティナママンがさっき深奥って言ってたから、つまりはボスを倒して来いって事だよなぁ。
ーーまぁ、魔力調整の良い訓練になると思えば何とかなるか。
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