第18話 レベルアップと、ステータスの恩恵。
「偉いわグレイ。ちゃんとママンの言う通りに行動出来たわね。今日の夜は一杯ご褒美をあげるわよ」
「あだっぶぅ〜〜!!」
叫ぶだけに飽き足らず、喚き散らして魔物を引き付けやがった
俺は歓喜に酔い痴れ、狩りを存分に楽しんでいる。
カティナ大佐は素晴らしい上官だ。戦場においては母と子などという甘ったれた考えを徹底的に排除し、如何に効率的に魔物を排除するかを冷静に見極め、指示を出してくれる。
そして、それが実現不可能ではないが容易くはないギリギリのラインであり、『出来るでしょ?』とまるで挑発してくるのが堪らない。
(ママンにこんな一面があったなんて……嬉しすぎて震える!!)
指示を出しながら乳母車を押しつつ、カティナママンは索敵の役割を存分に果たして敵の方角を示してくれた。
風の槍か、矢か、どこを狙えば効果的なのか、俺はそれを実感しながら冷静に粛々と魔法を放つ。
家に帰る方向を逸れているのは気付いていたが、俺とママンはテンションが上がり過ぎて最早止まれなかった。
【クレイジーモンキー Lv27】
「あの猿の魔物は群れを率いて囲んでくるわ。グレイならどう対処するか、ママンに見せてくれる?」
「だ〜ぶうぅ〜!!」
俺はレベルアップの影響からか肉体に力が漲っており、ママンの背中に跳んで張り付くと、乳母車を中心として周囲に百本近い『
より刺さりやすく、より抜け難い
(逃げれるもんなら逃げてみな。猿ども!!)
「良い感じね。一匹でも逃せば仲間を呼ばれるわ。外しちゃダメよ?」
「だじゃ〜!!」
周囲に隙間なく風矢を放つと、クレイジーモンキーの断末魔が鳴り響く。
仕留め損ねた魔物の呻く声などママンに聞かせたくなかったので、辛うじて避けたであろう猿の位置を音から把握して、もう一度無数の矢を放つと森は静かになった。
「今日はこれくらいで良いかしら。そろそろ家に帰りましょう?」
「あぶっ!!」
「シルフェが起きるときっと色々煩いと思うから、今ここでママンにレベルアップした『
「あいっ!」
俺は両手を開いたり閉じたりしながら、溢れる力を感じていた。
これは、元の世界では感じられなかった感覚だ。肉体をただ鍛え上げるだけでは得られない快感と言ってもいい。
赤子だろうが、成人していようが関係ない気がしてしまう程の万能感が込み上げる。
【グレイズ・オボロ】
種族:竜人族
年齢:1歳
Lv:8
HP:14970(820)
MP:13212(710)
力:1345(190)
体力:1323(185)
敏捷:1185(168)
魔力:8210(140)
精神力:3361(161)
【スキル】:知恵の種子、鑑定(小)、縮地、無詠唱、魔気融合、龍眼、剣術、体術、豪腕、狙撃。
【称号】:天衣無縫の剣士、神龍の加護、嵐龍の加護、転生神の加護、武神の加護、神殺し、龍殺し、貧乏神の想い人。
【装備】:『慈愛のネックレス:自動物理障壁(極)自動魔法障壁(極)神話級』
【神格保有数】:2
『
『
『神龍の加護』→レベルアップ時の必要経験値減少、ステータス成長補正(極)
『嵐龍の加護』→風属性の攻撃耐性上昇(極)、風魔法の習得補正率上昇(極)、スタータス成長補正(大)
『転生神の加護』→獲得経験値増(大)、ステータス成長補正(中)
『武神の加護』→武具、防具の強化補正上昇(極)、強化成功率百%、ステータス成長補正(大)、物理耐性上昇(中)
『神殺し』→魔法攻撃ダメージ2倍、聖属性攻撃耐性上昇(極)
『龍殺し』→物理攻撃ダメージ2倍、物理防御上昇(極)
『貧乏神の想い人』→強くなれば強くなる程、武神の愛が深まり自身の持てる所持金が減少する。周囲の者への影響は皆無。
矢と槍で急所を狙い続けたからか、新しく『狙撃』のスキルを覚えていた。
思っていたとおり、レベルが上がった分だけ成長補正の数字が加算されていってる。それにしても加護の影響だと思うけど、上昇率が半端ないぞこれ。
風魔法にしても
さっきは百本程の矢を発動させたけど、魔力に気を融合させればもっと強力な魔法を行使できると思う。
カティナママンは真剣な表情のまま、隅々まで俺の『
「やっぱり思った通りね。でも成長が早過ぎる。ただ、残された時間を考えると……」
ブツブツと呟きながら何かを迷っているようなママンの背中から飛び降りると、乳母車へと戻って身体を横にした。
隣では小さな寝息を立ててシルフェが眠っている。油性ペンがあれば額に『肉』って書いてやりたいな。
魔力枯渇まではいかないけど、やっぱり不慣れな力を一気に使うと頭が痺れるみたいに重い。
「ふふっ、お疲れ様。あとはママンに任せてお家に着くまで眠っていいわ」
「あい〜」
俺は瞼を閉じると、そのまま眠りに就いた。
__________
「こんなに可愛い寝顔を見たら、あれ程の凄まじい力を持ってるだなんて、きっと誰も信じないわね」
カティナは眠るグレイズの頭を撫でながら、うっとりとした恍惚の笑みを浮かべていた。我が子ながら身慄いしてしまいそうな程の膂力と魔力。
それがまだ一歳になったばかりだというのだから、母である自分でも信じられないと頬を抓ってみる。
「いひゃい……夢ではないわね」
馬鹿馬鹿しいと軽く頭を振った後、カティナは乳母車から一歩前に出て右手を翳した。
「折角グレイが狩った獲物なんだから、有効活用させて貰いましょう。『
魔物の死骸の中から様々な大きさと色をした『魔核』が浮かび上がり、次々とカティナの隣に開いた『
夕食にしたかったビビリーラビットは既に血抜きして吊るしてあり、帰り際にしっかりと回収した。
「いっぱい栄養を摂って母乳を出さないと、グレイが悲しんじゃうものね〜」
息子の欲望などとっくに見抜いている強かな母は、クスクスと笑いながら乳母車を押し、無事に家路に着いたのだった。
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