再開
彼は歩き続けていた。
低く、暗い、緑の天井の下を。
無限に続くとさえ思えたこの森も、じきに終わりを迎える。
彼の視界にはうっすらと光が映っていた。
「よし…」
この世界で唯一無二の相棒と別れてからもう2ヶ月が経とうとしている。
彼はその間ずっとこの森を一人、孤独に歩いてきたのだ。
誰の目にも映らない、彼自信も自分がどこにいるかさえわなっていないのだ。
ただ、枯れ葉と落ち葉を踏み続ける音だけが彼の存在を確かなものにしていた。
そしてその森は、ついに、終わりを迎えた。
目の前に広がる景色に、植物はなかった。
ただ、ありのまま廃れていった都市があったのだ。
彼の目から一筋の涙がつたい、地球の肌に飲み込まれて消えた。
「終わったか…」
彼は地面に座り込んだ。
この世界は、たしかに自分が今まで生きていた世界だった。
ただ、もう滅んでしまっていることは確かだった。
彼はそのことを悟ると、深いため息をついた。
「終わった…か…」
それからどれくらい経っただろうか、彼はまだ生きていた。
かすれかけた意識の外からかすかに聞こえてくる音を、彼は最初、幻聴だと思った。
しかし、少しずつその音は彼の意識を呼び戻し、それとともにその音も少しずつはっきりしていった。
ピアノの音だった。
彼は無言で立ち上がった。
音を頼りに、その方向へ歩いていった。
夢遊病のように、虚ろな足取りで。
その途中で彼の視界の端に、懐かしいものが写った。
ぼろぼろのショーウィンドウの中のアコースティックギター。
それを見た彼は、どこか戸惑うような表情を浮かべ、はにかんだ。
彼は無意識にギターを手に取ると、ピアノの音に応えるように、音を鳴らした。
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