約束
「ほい、出れるよ。」
「ありがと。やっとこのトンネルも終わりかしら。」
「そうだね、行こうか。」
「あら…植物がないわ。」
「…ほんとだ、まだこんなところがあったんだね。」
「なんでかしら…。まぁいいわ、とりあえず線路の上を歩いてみましょ。どうせビルばかりだけど。」
「そうしようか。」
「…歩きやすいわね、植物がないと。」
「そうだね。そういえばここの人たちはどうしたんだろう、植物に飲み込まれてないなら生きててもおかしくないのに。」
「確かに、そうね。でもわからないわ。」
「だね。わかるわけないか。」
「深く考えるのはやめましょ、わかったところで私達にはどうにもできないわ。」
「うん。ん、あれはなんだろう。教会?」
「あの白い建物のこと?行ってみましょうか。」
「ちょっと遠いよ?」
「いいじゃない、時間なんていくらでもあるわ。」
「それもそうだね。」
「…にしてもほんとに植物が少ないわね、普通に街が廃れて行っただけみたい。」
「だね、ここらへん、食べ物あるかなぁ。」
「あるんじゃないかしら、探してみる?」
「あの建物に行ったあとに探してみよう。」
「そうね、あ、そうだ。新しい服も欲しいわ。」
「それもそうだね、僕もいい加減新しいのがほしいなぁ。あ、でも。」
「でも?」
「あ、いや、何でもない。」
「なによ、どうせ『長くなりそうだなぁ』とか思ってるんでしょ?」
「なんでわかるのさ。」
「顔に書いてあるじゃない。」
「どういうことだよ。」
「そういうことよ。それよりもう着くわよ。」
「あ、そうだそうだ。忘れかけてた。」
「綺麗な建物ね。ほんとに教会なのかしら。」
「どうだろう、入ってみる?」
「そうね、行きましょ。」
「うわぁ、レッドカーペットだ。あの白いのは?」
「ドレス…だわ。ウエディングドレス。ってことは結婚式場かしら?」
「そうみたいだね。向こうは式場かな?」
「行ってみましょ。」
「ねぇ、いつもよりちょっと歩くの速くない?」
「気のせいよ。ってこのドア、重いわね。」
「どいてみて。フンッ…」
「あら、ありがとう。」
「うん、それよりほら、すごくキレイだよ。」
「わぁ…ホントね…。真っ白でホントに…綺麗…。」
「だね。」
「……ねぇ。」
「ん?」
「さっきのドレス着てみたいわ。」
「えっ!?」
「なによ、そんな驚かなくても良いじゃない。」
「ご、ごめん。」
「ちょっと着いてきて。」
「うん。」
「ね、どれがいいかしら?」
「どれが…って。わかんないよ。」
「なによそれ。もう。」
「そんなに怒らなくても…」
「怒ってないわよ。」
「怒ってるじゃん。」
「怒ってないわ。」
「いや怒って、いや。………ごめん。」
「…このドレスが、いいと思うよ。」
「どうして?」
「一番…君に似合うと思うから。」
「そう…」
「『そう…』って。なんだよ素っ気な…」
「…なになに。急に抱きついてきてさ……。」
「ありがとう…嬉しいわ。」
「…うん。よかった。」
「ね、…ちょっと向こうを向いててくれる?」
「うん。」
*
「…どう?似合うかしら。」
「うん。似合ってるよ。とっても。」
「…向こうに行く?」
「ええ。行きましょ。」
「これからどうする?」
「どこでもいいわ、あなたと一緒なら。」
「急にそんなに照れくさいこと言われてもな…。」
「いいじゃない、それより。ねぇ。」
「ん?……うん。」
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