神託

足を止めた。


足首が浸かるほどの水が、途端に静かになる。


廃線はトンネルに繋がっていた。

トンネルはそれほど長くはないのか、曲がりくねった先の出口から光が漏れている。


廃線をたどるようにトンネルに入った。


少しずつ外の音が遠ざかっていく。


天井からは、ツタのような植物が垂れていた。


グリーンネックレスやポトスたちだろうか。


その植物たちからピチョン。ピチョン。と、水が一滴一滴落ちて水面に踊る。


僕はまた足を止めた。


足元を小魚が通り過ぎた。






静寂の中にいる音の穴が僕の耳に入り込んでくる。


不思議な感覚だった。


確かに、静寂が聞こえた。







風が通り過ぎた。


僕は再び歩きだす。





少し歩きトンネルを曲がった。


その先はやはり出口だった。


が、それは植物たちに覆われ、通るのは人一人がいっぱいいっぱいな程狭くなっていた。


「はぁ…」


トンネルを抜けた僕はあたりを見渡す。


巨大な植物に支配された建物が見えた。


もう殆どの人工物は廃れているがその建物には凛々しさすら感じられる。


「マンション…?」


暫く立ちどまっていると、風が吹いてトンネルが鳴った。



その風に乗ったタンポポの綿毛が目の前を通り過ぎた。


綿毛はその建物の方へと飛んでいった。

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