物書き
「書くことに意味なんか求めるなよ」
そう言って気楽そうに笑ってみせた誰かの声は、いつの間にか悲痛な叫びに変わっていた。そりゃそうだ、そう何度も轢き殺してやれば悲鳴だって上げる。
何も生まない癖に、何も変えない癖に。何も──救えない、癖に。
それなのに小説もどきを書き続けるには、
ただ綺麗なだけの、夢物語や綺麗事にすら満たない、単語の羅列。
この文章すら、ほら、こうやって綺麗に纏めようとして──罫線なんか使いやがって。大嫌いだ、倒置法とかそういうのを使っていればそれなりのものを書いた気になる自分と、自分の書く文章なんか。
現実から逃避し続けた温室育ちの書く文章など所詮その程度だと、
ああ、それなのに何故だろう──そんなことなど微塵も考えず、ただひたすら莫迦の一つ覚えのように文字を羅列していた頃の方が、沢山の心を動かしていた、なんて。
「だから深く考えるなって言ってるのに。そこまでして変えたいものは、そんなに大切なものなのか?」
──五月蝿い。
そんなものが判るなら、とっくに答えは出ている筈だろう。ただ一つ言えるのは、もう二度と「綺麗なだけの文章」などと言われたくない、ということ──他人にも、自分にも。
それでも、そういうものしか書いてこなかった私には、結局どうしたものかなんて今のところ分かりはしない。書かないよりはマシだから、この手に筆を括りつけて文字のようなものを成しているだけだ。この文章だってほら、また手癖で綺麗に纏めにかかろうとして──それこそ、莫迦の一つ覚えのように。
だからという訳でもないが、そんな自分へのせめてもの反逆として、この文章を綺麗に終わらせるなどということだけは、
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