傾国のとまで言われるその美貌のために、苛酷な人生を送ってきた少年。
主人を殺した男を庇って傷を負ったことからその運命が動き出します。
その生い立ちゆえに、感情の動きが少なく見えるのに、自分を拾ってくれた青年伯英の気遣いや言動に少しずつ心を動かされていく様子が、繊細な描写で伝わってきてこちらの心まで鷲掴みされてしまいます。
そして、淡々と静かに語られる、先の読めない絶望的な戦に巻き込まれていく彼らの運命がどうなるのかと結局最後まで読まずにはいられませんでした。
何とも余韻の美しい物語です。
少年子怜の何とも艶めいた様子と、それとは別に、伯英に向けるまさに「恋にも似た」(けれども異なる)まっすぐな想いが、やがて彼の強さにも変わっていく様子が本当に素敵でした。
脇役となる他の登場人物たちも皆一癖も一癖もある人ばかりですが、何より少年に振り回される迅風が、単純で粗野に見えて面倒見の良い実は本当にいいアニキでした。素敵!!