第一章 純白に染む
純白に染む(一)
「
「そのようで」
「兄貴!」
その破落戸の筆頭である呂迅風は、
「おめでとうございます! ついにやりやしたね!」
ひざまずいて祝意を示す若者の頬に、ななめに走る刀痕が一本。それが興奮のためかうっすらと赤く染まっている。
「迅風」
伯英はぎろりと配下の青年をにらみつけた。
「なんでおまえがここにいる」
「なんでって、そりゃあないですよ、兄貴」
迅風は大げさに両手をひろげた。
「
「阿呆」
伯英は迅風の頭に拳骨を落とした。
「おまえには
「いや、それは……」
きつい眼差しを向けられて、迅風はたちまち青ざめる。
「伯英どの」
横からとりなしてきたのは文昌だった。
「今回の件はわたしの落ち度でもありますから。瑯へ使いを出すのが遅れたせいで、皆に要らぬ心配をかけてしまったようです。責めならば、まずわたしに」
文昌が頭を垂れると、伯英は面倒くさそうに頭をかいた。
「わかったよ。迅風の処分はおまえにまかせる。あとでこってりしぼってやれ」
「承知しました」
顔をあげた文昌が、ちらと迅風を見やると、迅風はうへえと首をすくめた。
「で、兄貴、辛の野郎を討ったってのに、なんだってこんなとこに留まってるんです?」
さっきまでしおれていたのが嘘のように、けろりとした顔で迅風が尋ねた。そそっかしいところはあるが、切り替えの早さはこの配下の長所だと伯英は評価している。使いも待たずに、伯英らが身をひそめる山間の廃廟を見つけ出した嗅覚と同様に。
「怪我人がいてな。へたに動かせないほどの深手で、昨夜までは生きるか死ぬかってとこだったんだよ」
「そりゃ大変だ。誰なんです、そいつ」
伯英はひっそりと笑った。
「おれの命の恩人だ」
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