おじさんのお話

ジェームズボンバークライシス

第1話

とある公園に少女がいた、名前はティオと言う。

ティオは、水色のワンピースを着ていた。

麦わら帽子を無くしていたティオの麦わら帽子を見つけたのは、50歳くらいで無精髭をはやし、継ぎ接ぎだらけのシャツと、ボロボロのジーンズを履いていた。

身体からは異臭がして、誰も近くことは、なく、ただ死期を待っていた。

おじさんは、ティオに麦わら帽子を渡し、姿を消そうとした。

ティオはおじさんの手を取り、言った

「おじさん、ありがとう!麦わら帽子を拾ってくれて!お礼がしたいの!うちに来て!」

断る理由を探すのが面倒なおじさんは、言われるがまま、ティオに手を引っ張られるまま、大きな家に来た。


家は住宅街から外れた場所にあった。

木造建築で、2階建の洋館のような大きな家はただただおじさんを驚かせた。

「すごい、大きな家だなぁ」おじさんは、呟いた。

ティオは、居間に案内した。

部屋には老婆と老翁とティオが写った写真が沢山あった。

ティオは、台所へ行き、ママを呼んだ。

ティオのママにおじさんは、追い出されるのかと不安を感じたが、そんなことはなかった。

ティオのママは優しかった。

おじさんにシャワールームを貸し、さらには、おじさんのサイズに合う服まで買いに行ってくれた。

ママが買いに行ってる間、クーラーのかかった居間で、ティオとくつろぐおじさん。

ティオはおじさんに、沢山のお菓子をあげた。

それは、ティオが真心をこめて作ったクッキーやビスケットだ。

おじさんは、涙して食べた。

こうして、空腹が満たされたおじさんは、眠たそうに目をこすると、ママがちょうど帰って来た。


ママは、おじさんにとても綺麗なシャツとズボンを買ってあげた。

おじさんは、頭を下げた。

「本当に・・・ありがとうございます。

こんな浮浪者に・・・」

ママは、呟いた。

「良いんです・・・あなたは、あの子の麦わら帽子を拾ってくれたんですから」

それから、おじさんは、長い間くつろいだ。

一緒に夕飯を作ったり、ティオの宿題を手伝ったり、洗濯を干したりするのが楽しかった。


夜ご飯を食べ終わり、おじさんは、家を出ようとした。

すると、寂しそうな顔をするママとティオがいた。

でも、おじさんは、これ以上迷惑かけてはいけないと、家を出た。

おじさんはいつものように公園のベンチの上で新聞紙を掛け布団がわりにして寝ようとしたが涙が止まらず眠れなかった。

ただ、優しさが痛かった。

本物の優しさが嬉しかった。

おじさんは、3年前までは、とある有名企業の営業部長だった。

みんなから慕われ、給料もかなり稼いでいた。

だけど、ある日電車の中で、とある女子高生がおじさんの手を掴み「この人痴漢です」の一言で彼の幸福を一瞬で奪った。

リストラを言い渡され、離れていく、娘と妻、執行猶予はついたものの、彼の人生は終わったに等しかった。

友達も離れ、家族も離れ、仕事も失う。

何もかもが失われ、彼は家を売り、缶を集めて生活するホームレスとなり、ただ死を待った。

そんな中であった、ティオとの出会いは・・・。


次の日、家事を手伝いにおじさんは、ティオの家に行った。

そこにアザだらけのママがいた。

ママは笑って、「転んでしまったのよ」と言ったが、この傷は明らかに殴られた後だった。

おじさんは、ある程度の家事を手伝った後、ママから事情を聴きだした。

そこにあったのは、DVの現実だった。

お金持ちの旦那さんは、傲慢で意地っ張りで、ママとティオに愛を与えなかった。

そして、気に入らないことがあると、ティオとママを殴ったり、蹴ったり、ママの髪を引っ張りした。

おじさんは、ティオとママを救いたいと強く願ったものの何もできなかった。

無力なおじさんは、ただただ悲しみにくれた。


おじさんは、午後12時頃ママの手伝いを終えてから家を出て、寝床の公園に行った。

そして、ティオのママのために生きたいと生活保護を申請しに区役所に行った。

申請が通るまで沢山の書類を書かないといけなかったり、いろんな審査があったものの、彼は生活保護を受けることが出来た。

生活保護を受けることに多少抵抗はあったものの、「働くために」住居が必要だったため仕方がなかった。

こうして、時は流れた・・・


1年後

おじさんは、工場で働いていた。

おじさんは、贅沢をしなかったので、お金が貯まっていた。

ある日の夕方ティオの家におじさんは、行った。

ティオとティオのママを救うため、おじさんは、ママに言った。

「俺と・・・結婚してください!

俺はあなたを救いたい・・・」

ティオのママは、首をかしげた。

突然の告白に驚いたのだ。

ティオはおじさんに抱きついた。

「嬉しい!あたし、おじさんと、ママと3人で暮らしたい!」

でも、ママは言った。

「ありがとうございます、ですが、最近あの人も変わりました。

もう暴力で訴えることはなくなり、本当に私たちを愛してくれるようになりましたの。

ごめんなさい・・・」


おじさんは、自分のアパートに戻った。

なんのためにあの日生活保護を申請したのだろう、何のために今日まで生きたのだろう。

そして、何より失われた自分に対する愛が痛かった。

おじさんは、ホームセンターに行き、ロープを買いに行った。


そして


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おじさんのお話 ジェームズボンバークライシス @JAMESBOMBER_C

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