34 鍋
カイトはサラダの盛り付け任務に戻ったらしい。新藤は勝手に冷蔵庫を開け、テーブルに用意されていたグラスにジュースを注ぎながら一希にも勧めた。新藤と檜垣家の長い付き合いが
鍋と一口に言ってもいろいろあるが、一希が育った環境では鶏やキジ、
檜垣家では
「すっごーい、いい匂い!」
まずは
「うわ、おいしい!」
味がしっかりしていて
「鶏がらですか?」
「まさか私が出汁取ったわけじゃないわよ。スーパーに売ってる粉末のコンソメスープ。まあ鶏も一応使ってるんだろうけどね」
「へえ。そっか、具材からも出汁が出るからこの味に……」
コンソメスープなんて小学校の給食に出てきた記憶しかないが、あれには具はほとんど入っていなかった。こんな使い道があったとは。
「ソーセージも香草たっぷりでおいしいですね」
「何を隠そう、これもスーパーの冷凍品でえす」
「本当ですか?」
「手抜きの天才だから」
とカイトが口を挟むも、芳恵は堂々胸を張る。
「知恵と言ってちょうだい」
「鍋のイメージ
と新藤。
「本当ですね。斬新」
一希の父などは絶対に受け付けなかった類の味だが、子供は喜ぶだろう。サラダも、ブロッコリーに海老、ゆで卵、マカロニと、一希には考え付かない組み合わせだが実に美味だった。
カイトがガラスの器に一人分ずつ盛り付けたサラダは、海老を目、ブロッコリーを鼻に見立てて顔型に並べられている。
「よくできてるな。お前にそっくりだ」
「違うよ、ケンケンだよ」
「何言ってんだ、俺はもっといい男だろ。ほら、ニンジンちゃんと食べろ」
「うげー」
その微笑ましいやりとりを眺めながら、一希は人知れず頬を緩めていた。子供と
食後には芳恵が市販のティーバッグの紅茶を美味しく入れ、皆で楓仙堂のプリンを食べた。手土産として持っていったものなのにプリンをお代わりしようとする新藤を一希がたしなめ、
自室にこもりっぱなしのミレイには新藤がちょっかいを出しに行ったらしいが、結局彼女は二階から下りて来ないままお開きとなった。
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