9 探査見学
ふと我に返れば、対岸では村越が順調に探査を進めていた。その光景自体は海外の映像で見るような地雷探査を
途中、ピーピーピーという電子音が微かに鳴り、村越が自作したらしき蛍光オレンジの旗を立てる。十五分ほど経ってまた一箇所に旗。新藤は車にもたれて見ているだけ。
(そうだよね。本当の現場ってこんなもんかも……)
リアルタイムで改めて見れば、ひたすら地味な作業だ。ドキュメンタリー番組などでクローズアップされるのは、主に大型爆弾の緊迫感あふれる処理現場。それに憧れてこの世界を目指す者も少なくないが、処理士や補助士がそんな劇的な場面にばかり出くわしているわけでは無論ない。
実情は探査に次ぐ探査。資格と技術が必要とされる割には、それらを発揮するチャンスがなかなか巡ってこないというのは、早川技術訓練校のOBたちからもよく聞かれる嘆きだ。
予定範囲の探査を終えた村越が、自分の白い軽トラから
(いよいよ掘り出すってことね)
一希は双眼鏡をしっかりと構え直し、目を凝らした。村越が工具箱を
時折二人の微かな声が風に乗って届くが、会話の内容までは聞こえない。一希は
村越が掘り出した何かを新藤が受け取る。彼らの扱い方からして、あれは爆弾ではない。
(ただの鉄パイプ……?)
こういう爆弾ではないものが探知されてしまうこともよくあると聞く。
そしてもう一本の旗。同じように村越がそっと土を掘る。二人して穴を覗き込んだ後、村越が次の動きに移った。
工具箱から何かを取り出し、掘った穴の上に覆いかぶさるような姿勢になる。おそらく爆薬をしかけているのだろう。つまり、今度こそ本物の不発弾が見付かり、持ち出して解体する代わりにこの場で爆破処理することになったのだ。一希は双眼鏡を目に押し当て、思わず身を乗り出す。
導火線を引っ張ってたっぷりと距離を取り、爆破準備が整ったらしい。が、いざ火を
(あ、鹿……)
いつの間にか、林の
それを眺めていた新藤は、不意にそばにあった工具箱を抱え上げ、ガンガンと蓋を打ち鳴らす。対岸まで十分響くその音にはさすがに驚き、鹿たちは林の中へと去っていった。平和な食事を邪魔されたのは気の毒だが、あの距離で爆発を見せられる方がよっぽどかわいそうだし、破片が当たらないとも限らない。
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