3 授業
深さ三メートルの作業
彼らの視線の先には、すっかり
「
一人が指示を出し、残りの二人がそれを復唱して、弾底の信管に手をかけた。
回転が四十五度を超えたところで動きが止まり、
「四十五度完了!」
の声。
それを聞くや、
過去の処理現場で撮影された資料映像の緊迫感は、作業員の卵たち二十数名の穏やかな呼吸を奪うに十分だった。しかし、その先の作業風景はカットされてしまったらしく、次に映し出されたのは信管が抜かれる瞬間。最終的に十二回転半させたという字幕が出てきたから、その間の十二回転以上が丸々
それ以降の処理の様子も、実際の所要時間のイメージすら湧かないほどに短く編集されていた。間もなく、作業担当者や映像製作者の名前がスクリーンを横切り始め、教室の蛍光灯が
「先生」
と、一希がすかさず手を挙げると、
一希の周囲からは「またあいつかよ」、「今度は何だよ」と、うんざりムードで
「先生、質問があるんですけど」
土橋がようやく顔を上げた。
「何だね」
返事とともに漏れ聞こえたため息は、この際無視する。
「あの、こういう風に編集されていない、最初から最後まで全部丸まんまの作業映像っていうのはないんですか?」
「見たことないねえ。あったとしても、そんなもん二時間も三時間も見てられんからね」
「られますよ! だってさっき、信管から一回手が離れた後、次はもう抜く瞬間だったし……これじゃ、その間に何が起きたのか全然わかりませんよね。あと、もうちょっと全体を映してくれたらいいのに。処理士がアップで映ってる間、補助士は何してるんだろう、とか……」
「大したことはしとらんから映っとらんのだろう。下っ
苦虫を噛み潰したようにぼやく土橋も、決して生徒たちのやる気を
「あと、そもそも爆弾をあの穴にどうやって下ろしたのかとか、終わった後の引き上げなんかも写真でしか見たこと……」
「吊り上げて運ぶのは基本的に軍の仕事だ。処理士が安全を確認してゴーサインを出す。補助士には関係ない」
「いや、関係ないことはないと思いま……」
「教材に不満があるなら、校長に言いなさい、校長に」
一希は口をつぐんだ。実は、教材や指導内容について校長にはとっくに文句を言いに行っている。が、「少しでもわかりやすいよう最善を尽くした結果がこの選択だ」との返答。
これが技術訓練校の最善なら、全ては資格を取って現場に出てから学べと言われているに等しい。つくづくがっかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます