第十一話 冒険者ギルドへ
俺達は役所の人の話通りに
「ここか……」
俺はその大きな二枚扉を見、期待と不安に胸を膨らませながら大扉を押し開けた。
「ワハハハハ!」
「今日はの飲むぞぉ!」
冒険者ギルドに併設されている酒場が大繁盛の大騒ぎ状態だった。
「貴方達昼間っから飲んだくれてー!依頼はしないの?」
俺が呆然としていると、冒険者ギルド側から、一人の女性が両手を腰において、飲んだくれている冒険者らしき風体の男達を
「まぁそう言うなよ
冒険者風の男は、それっぽいことを言って、理奈と呼ばれた女性の言葉を意に返さず飲み続ける。
「まったくもぅ。貴方達はそう言って飲む口実作っているだけでしょう!」
「まぁ……そうとも言うかな!」
男達の悪びれない態度に、理奈と呼ばれた女性は
「なんだか騒がしいところだね」
俺がそう言うと、雪と灰の二人も呆れたように、でも知っていたように苦笑いをしている。
「冒険者というのは何かにつけて飲みたがるのです。力自慢のごろつきが多いですからね。中には
少々納得しきれていないような灰や、箱入りを拒否する雪が苦い顔をする中、俺は意を決して冒険者ギルドのカウンターに向かう。周囲の酒飲みや普通に依頼を確認している冒険者は、見ない顔である俺たちのことを好奇の目で見つめている。俺達はそのことを気にしないようにし、理奈と呼ばれていた女性のカウンターへ着いた。すると理奈と呼ばれた女性は先ほどまでの呆れ顔を正し、礼儀正しい顔で受付を行ってくれた。
「いらっしゃいませ、梓馬の冒険者ギルドの受付をしています。理奈です。こちらの冒険者ギルドは初めてですか?」
「は、はい。えっと、冒険者登録をお願いしたいのですが……」
「冒険者登録ですね。では、軽い認定試験のようなものがございますが、よろしいでしょうか?よろしければ場所を移動しましょう。こちらです」
理奈さんに連れられ、俺達は冒険者ギルドの裏へ向かった。そこには、少し広い訓練場らしき場所についた。
「ここが認定試験の会場……」
俺が緊張のこもった声で言うと、理奈さんはクスッと笑った。
「安心してください、ここでは単に模擬戦を行ってもらうだけです」
「模擬戦、ですか」
俺はそのことを聞いた上で、もう一度模擬戦会場を見渡す。屋外であるその場所は、なんの障害物の無いただの小広いだけの広場であった。
「あなたの武器によって、ある程度は変えますが、基本的にはこの広場内だけで戦闘を行ってもらいます。シチュエーションは、『森の探索途中、強力な魔物と遭遇!諸事情により、逃げることも助けを求めることも出来ない!どう切り抜ける!?』です」
「な、なるほど……」
俺は理奈さんの勢いの良いシチュエーション説明に少し驚きながら、しっかりと思考する。森の中で強力な魔物、奇襲をした、されたはなく遭遇戦。逃げることも救援要請も出来ない。守るものがいるか、他の魔物に周囲を囲まれているか。そしてどう切り抜けるか、か。
「質問良いですか?」
俺が考え事をしていると、灰が一人手を挙げて理奈に質問をした。
「はい、何でもどうぞ?」
「では、
その質問に、理奈は少し考えたように目線を逸らした後、灰を見て言った。
「そうですね、ある程度は破壊しても大丈夫です。色々と気にしなくて大丈夫ですよ。実力を見たいと言う所もあるので」
「じゃあ……えっと、そういえば名前を聞いていませんでしたね、すみません。お名前をお聞きしてよろしいですか?」
「はい、冬洞柊です」
「雪です」
「灰です」
一人ずつお辞儀を理奈さんは笑顔で受け、俺を広場の端に移動するように求めた。そして俺がその場所に移動完了すると、理奈たちも安全な場所に移動し、俺の位置と対局になる位置に向かって大声を出した。
「
理奈さんの声に反応して、木々の奥から大柄の男が、大剣を担いで現れた。
「おぅ!俺は
「よろしくお願いします」
俺は現れた男、彰斗さんの強さを測りながら、構えを取ろうとする。
「そう言えばお前、武器は使わないのか?」
「いや、あるにはあるんだが……」
俺はそう言って雪の方を見ると、雪は頷いて手を伸ばしてきた。俺もそれを見て頷き、雪の
「来てくれ、
俺の声に
「それは、“
俺はその言葉に首を
「神具?……いえ、これは
「竜具……するってーとお前さん、竜の導かれ手かい?」
「えぇ、まぁ……」
俺が肯定すると、彰斗さんは興味深そうに、俺のことを見た。
「へぇ、こんな若造がねぇ……それほど実力があるということか」
「いえ、多分そんなことはないと思いますよ」
俺がそう言って構えると、彰斗さんも構える。そして少しの間の後、理奈さんが開始の合図をする。
「それでは……始めっ!」
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