第五話 参加祝い
その日の夜は、村を挙げての宴会となった。子供は肉に貪りつき、大人達は大酒をかっ食らう。絵に描いたように賑やかな宴会だ。
「お~い!しゅう!こっちにこ~い!きょ~は、おま~え~がしゅやくのえんかいじゃ~……」
そこそこ酒に強い筈の木こりのじいさんが、ベロンベロンに酔っている。相当今回の竜騒動が嬉しいとみた。俺はじいさんの誘いをやんわりと断り、人化した雪を連れ、宴会を一望出来る隅っこの椅子に腰掛けた。
「悪いな、騒がしくて」
俺がそう言うと、雪は「ううん」を首を振った。
「楽しくて、明るくて、賑やかで。私、そう言うの好きだよ。……なんだか懐かしい」
「懐かしい?」
俺の聞き返しに「なんでもない」と、何処か遠くを見ながら、また首を振り、今度は雪から話を振ってきた。
「ねぇ柊。柊が竜の導かれ手になりたかったのって、こう言うこと?」
雪の言葉に、俺は宴会を楽しそうにする村の人達を見る。
「それも理由の一つかな。単に竜の導かれ手ってかっこいいな。武器を手に様々な人達と戦っているのかっこいいな。て言うのもあるんだ。だけど……竜の導かれ手になれると、竜帝国から補償金が出るだろう?それを村に送るつもりだ。あともし竜人になれたら、それこそお金が沢山貰える。それもある程度村に送るつもりだ。この村は名産品も乏しくて交易もあまりない。吹けば飛ぶし、魔物に奇襲でもされたらすぐ滅んじゃう。それをどうにかしたくてな。まぁこれに関しては、ただの
俺がそう言うと、雪は少し食い気味に言った。
「ううん、良いと思う、その理由。人の為に自分の意思で行動するのはとても良いこと。たとえ、その中にかっこいいからって理由があったとしても。って言っても、竜の導かれ手ってあんまりかっこいいものじゃないよ」
「そうなのか!?」
俺と雪はそれから数分、互いに語り合った。その光景を背後から見つめる者がいた。
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