馬鹿勇者共のバカルテット
那珂町ぐいと
第1話
俺たちはいつも四人だった。
「おい!バイス!そっちに行ったぞ!」
腐れ縁のようなもので幼少期からずっと一緒だった。
「わかってる!もうちょい、近くに来れば...!よし!ヒット、回復頼む!」
「了解〜!あと、後ろもう一匹いるぞ」
「痛ッ!何すんだゴブリンてめぇ!」
「フゴッ!?」
後ろから攻撃を仕掛けてきたゴブリンにカウンターをお見舞いする。
「無駄な手間掛けさせんなよな〜」
「悪い!遅くなった!」
「やっと来やがったな、クソアーチャー」
小さい頃からいつも四人で馬鹿やって街の大人に怒れては謝っての繰り返しだった。
毎日毎日四人でギルドに行っては冒険者から冒険の話を夜遅くまで聞いていた。そしていつからか四人の夢は冒険者になる事になっていた。
「ったく、もうちょっとスマートにいけよ、スマートに。」
「一番遅く来た奴が何言ってんだ。このバカチャール!」
「だったらおめーももうちょい支援しろや!なんのために魔法使いやってんだ?」
「ロマンがあるからに決まってんだろ。」
「第一にこのパーティーはちゃんとバランスが取れてんだ。俺がちょっといなくてもなんとかなる様な組み合わせだろ?レジェンドヒーラーのヒット、ソードマスターのバイス、大魔法使いのラウザー、そしてこの俺、神弓使いのチャール様。俺たちは何年冒険者やってんだよ、あの頃にスタートしてから十五年だぞ?もう慣れっこだろ」
「まあ、最初の頃に比べれば慣れたけどよもうちょい上手く立ち回れんじゃねーのか?」
「俺たち馬鹿なんでそーゆー難しい事なんてない出来ませーん!もしそーゆーことがやりたいんだったら前もって言ってくださーい」
「これだからコイツらは!お前らホントにガキの頃から変わんねーな!」
「心はいつでも純粋な少年だぜ?」
「そのままアタマもガキのまんまだけどな」
「なんだとバイス!おめー、この狩りの賞金おめーの分だけ分けてやらねーからな!」
「あっ、てめー!チャールずりーぞソレ!」
「ハッ!許して欲しけりゃなんか奢れ!」
「はいはい、そこまでにしろよな。早く帰んなきゃ血の匂いにつられた他のモンスターに遭遇するぞ〜」
「ソレはめんどくさいから嫌だな...。よし、帰るか!」
こんな風に喧嘩もしながら毎日を楽しく過ごしていた。だがそんなある日突然思いもよらぬ出来事に巻き込まれる。
「さーてと、取り敢えず今日はどーっすっかなー」
「なんか面白い事でもないのか?ラウザー!家庭菜園ばっかじゃなくて俺にかまえよ!野菜じゃなくて!歌えば美声、喋ればイケメンのこのチャール様に!」
「お前の場合は歌えば混乱を巻き起こし、喋れば残念なバカだろうが。ていうか、最近野菜に水を与えられてなかったからな。水やんなきゃ枯れちまうぜ」
「アレ?そういやヒットは?まだ起きてこないのか?」
「そういやそうだな。いつも一番最初に起きてんのに今日は珍しいな」
「大変だー!」
その時街の方から走ってくるヒットの声が聞こえた。
「なんだアイツ、なんであんな急いでんの?」
「さあ、でもなんか手紙っぽいの持ってね?」
「また、なんかやらかしたんだろう。さ、水やりの続きといきますかね〜」
「はぁ...はぁ...、おい、お前らこれ...」
「なんだそれ」
「なんかあったのか?」
「あんまり面倒ごとは好きじゃないんだが」
そんな事を言いながらも全員ヒットの側へ近づいてくる。そしてヒットが持っている手紙を一通り目を通していく。
「この手紙はな、俺が早起きして、朝のランニングをしてる時にギルドの受付嬢さんから受け取ったんだがな...。」
「お、おい!」
「これってまさか...。」
「やれやれだ...。」
「その手紙に書いてある通り、王族の護衛の依頼が、指名でしかも、国王直々に依頼を頼んできてくださった。しかも、国王からの評価が良ければ王城直属の冒険者になれるらしい...。」
「やるか...。」
「なんせ、俺たちは超有名な冒険者だもんな!」
「とうとう国王さんまで俺たちを頼る様になったようだな...。」
「取り敢えず、準備するぞ!明後日には王城に着いてなきゃいけないからな」
「今用意できる最高の装備で行くぞ。」
「俺、武器新調してくる!あと防具も!」
「さて、ローブと杖手入れでもするかな」
「お前らの欲望に正直なところ嫌いじゃないしむしろ好きだぜ」
そして時間は流れ、手紙が渡された三日後の護衛任務の当日。四人は王城の前まで来ていた。
「なんか近くで見るとやっぱデカイな...。」
「どうした、チャール?ビビってんのか?」
「あまり大きな声を出すな。田舎者に見えるぞ」
「すいませーん!護衛の依頼を受けてきたものですがー!!」
ちょうどバイスの声を聞いたのかとても良いタイミングで魔法使い風の女性が現れた。そしてその女性は四人に向かってお辞儀をし、口を開いた。
「皆さま、本日は護衛の任受けてくださり誠にありがとうございます。本日はこのデウスタール王国を出発し、隣国のクァイト王国までの護衛となります。よろしいでしょうか?」
「わかりました」
「大丈夫です」
「任せて下さい!」
「あの、一つ質問なのですが...。」
「はい、なんでしょうかラウザー様。私にお応えできるものでしたら何でもお応えします。」
「ん?」
「今何でもって」
「黙ってろバカ共!いや、失礼。では質問させていただきます。何故我々なのでしょうか?」
「はい、それがですね...。国王様が隣国に行くにあたってですね城の者達に誰かとても心強い冒険者を知っている者はいないか?とお聞かれになってですね、それであなた方が選ばれたという訳です。ご理解いただけたでしょうか?」
「はい、説明ありがとうございます。ではそのご期待に応え我ら四人今回の任務全力で当たらせてもらいます。」
「ありがとうございます、ではみなさんこちらへどうぞ。国王様がみなさんにお話があるとの事です。無礼のないようお願いします。」
「大丈夫です」
「王城って初めて入るな...」
「なんか、緊張してきた...」
「いつもの感じで...いつもの感じで...。落ち着け平常心...。」
王城の中を歩き数分ひときわ豪華な扉の前で女性が止まる。
「申し遅れました。私名前をセアドと申します。この扉の先に国王様がお待ちになっておられるので。」
セアドがコンコンと扉を叩き扉を開け四人を中へと案内する。
「国王様、ただ今連れてまいりました。この者達が最近巷で噂の冒険者四人でございます。
(なんか、やばくね?)ヒソヒソ
(ヤバい)ヒソヒソ
(俺腹痛くなってきた...)ヒソヒソ
(緊張がヤバい)ヒソヒソ
「では冒険者様方自己紹介の方を」
「あ、お初にお目にかかります!私このパーティーのリーダー的存在の職業ソードマスターのバイス・ラウグナーです。今回のご依頼誠に有難うございます。我々も鼻が高いばかりです。」
「このパーティーのヒーラー、職業レジェンドヒーラー、ヒット・マルクスです。」
「このパーティーでアーチャーを務めさせてもらっています。職業神弓使いのチャール・クリストフです。」
「そして最後に、このパーティーの魔法使い枠の職業大魔法使いのラウザー・ダニエルです。」
「以上、最高位職業四人パーティー、グライズです。よろしくお願いします。」
自己紹介を終え、ちょっと安心していると国王がゆっくりと口を開く。
「ふぉっふぉっふぉ、そこまで固くならんでも良い。別に取って食うわけでもないんだ。もっとリラックスせんか」
「は、はい」
「わかりましたっす...」
「では、そのように。失礼します。」
「お気遣いありがとうございます」
「国王様、この者達が先程も述べたようにこの国唯一の最高位職業に就いている者達です。どうでしょうか?任せられそうですか?」
「うむ、こやつらからはただならぬ力を感じる。やはりこやつらに頼んで正解だったようじゃ。」
「認めていただきありがとうございます。」
「では、そなたらに儂から直々に依頼をする。儂が隣国のクァイト王国に行き、ここまで帰ってくるまでの護衛を依頼する。良いか?」
「はい、喜んで」
「任せて下さい」
「必ずやその依頼完璧に成し遂げてみせます。」
「お任せを、我らに出来ない事などありません」
「頼もしい奴らじゃの、セアド」
「ですね。この人達なら任せられそうです。」
「では行きましょうか、国王様、それと冒険者様方。一応この城の騎士長達も付いて行きますので何かあった時はその方たちに。」
「わかりました。では行ってきます。」
「道中どんな敵が出ても粉砕してやるぜ!」
「程々にしろよチャール。お前の弓は攻撃範囲が広いからな」
「まあ、我が魔法の前ではどんな敵でも無力ですよ...。」
「では、総員、隣国クァイト王国に向けて、出発!!!」
こうして国王率いる馬鹿四人と王城騎士団総勢500名を合わせたメンバーで隣国、クァイト王国へと向かうのであった。
馬鹿勇者共のバカルテット 那珂町ぐいと @Masumurukai58
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