第21話 対決
戦士像が、掌を伸ばした。
「―――!!」
指輪の娘は即座に反転、階段を駆け下りていく。その先で妖精騎士ともう一体の巨像が戦いを繰り広げているのを見とがめた彼女は、万物に宿る諸霊へと助力を求めた。魔法を行使したのである。
果たして、彼女の言葉に応じて援軍が現れた。巨像の巻き起こす空気の流れより
彼らは、前方の敵へと一斉に襲い掛かった。
妖精騎士を押しつぶさんとしていた巨体。そやつを中心に暴風が巻き起こり、たちまちのうちに竜巻となり、そして視界を覆い尽くす。
視界を失った戦士像は足を踏み外した。ゆっくりと擱座していく巨体。
「数が多すぎる。ひとまず引きましょう!」
迫る新手を妖精騎士は認めると、駆け下りて来た娘の手をとり階段を駆け下り始めた。
入り口が見える。敵の巨体では潜り抜けられぬだろう。先のことは安全を確保してから考えればよい。
その時だった。ふたりの眼前に、巨大な岩が落ちてきたのは。
衝撃。
何が起きたか理解するまで、一拍の間が必要だった。戦士像は、岩を投げつけたのだ。侵入者たちの逃げ道を塞ぐべく。
「……っ!」
振り返る二人。敵勢はこちらへ迫り、もはや逃れる術はない。
身構える彼女らを包囲すると、戦士像たちは動きを止める。一斉に襲い掛かってくる算段であろうか。そういぶかしんだ頃。
中央の戦士像が、口を開いた。
『よくぞここまでたどり着いた。娘よ。今度こそ五体を引き裂き、その魂魄を引きずり出してくれよう』
聞き覚えのある声。妖魔の長の声だと気付いたふたりは、敵に鋭い視線を向けた。
◇
ようやくこの時が訪れた!!
妖魔の長は歓喜の中にいた。
彼が憑依しているのは戦士像の一体。この空間、聖域を守護するために四方に配された神殿の
だから長は、周囲の
『殺せ!そして我らが女王をここに甦らせるのだ!!』
◇
遠近感が狂いそうだった。
迫るのは何十という巨大な石像。しかもそれを率いるのは不死の敵である。勝ち目はない。
人間のままであるならば。
娘は、覚悟を決めた。だから指輪に手をかけ、そして顔を向ける。ここまで己を助け、支え、共に旅してきた仲間へと。
妖精騎士は、悟った。指輪の娘が一体何をしようとしているのかを。
「―――駄目だ!あなたは何をなさろうとしているか、わかっているのですか!?」
「分かっています。使命を果たすにはこうするより他ないことも。どのような危険をもたらすかも。この指輪がそもそも何のためのものだったのかも。
ですから、しばらくこれを預かっていてはくださいませんか」
娘は指輪を外すと、それを妖精騎士へと手渡した。
用事が済んだ彼女は敵に向き直る。
闇が、輝いた。
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