第13話 彼氏と警察との馴れ初め

 さて、そろそろ私と彼氏とがどうやって出会ったのか書きたいところだが、だけどその前にまずそれよりも重大な出会いを書き記しておこう。

 それは…… 彼氏と警察との出会いである。



 それは彼氏が中学生の頃(うん十年前)にさかのぼる……



 * * *



 花の中学生時代。

 彼氏は部活を何にしようか迷っていた。


 中学生活を楽しいものにするにあたって、部活を何にするのかは相当に重要なファクターである。

 彼氏は最初は サッカー部に入ろうと考えていたのだが、サッカー部は悪名高い不良の巣窟だった。

 当時その中学校を締めていた番長格(死語)の先輩が主将という、まさにサッカーボールよりも人間の頭を蹴りとばしている時間の方が多いんじゃないかという部活。

 ちなみにその先輩、ど金髪角刈り、短ラン、ボンタン、さらには普段着ているジャージが肩の部分から袖を引きちぎったワイルドノースリーブという、昭和の不良の代名詞のようなお人だった。 後のスギちゃん……ではない。

 最近になって彼氏が一度地元で見たことがあるらしいが、 派手なお水系のお姉ちゃんを引き連れて完全にそっち系の外車に乗っていたとか。本職になったのかな……



「ねえねえ彼氏、ボンタンってなに? 柑橘系? 美味しいの?」

「太股の部分がぶかぶかで、足首がすぼまった変形学生服の一つだよ。昔はそういうのがあったんだ……(遠い目)」



 他にもドカンと呼ばれる、太股から足首まで一直線に太いズボンもあったりもした。



 まあそれはともかくとして、そういう理由でサッカー部は選択肢から消えた。

 他の候補としてはバスケ部、野球部などがあったのだが、バスケ部は同じように不良の巣窟で、ゴールよりも人間の頭にスラムダンクをきめている時間が多いんじゃないかっていう部活だった。

 野球部は一年生は全員丸坊主にしなければいけないという理由で却下。あと野球部も不良の巣窟だった。ボールよりも人間の頭にバット(以下略



 どんだけ不良ばっかりいる中学だ。



「……彼氏はどこに住んでたの? スラム?」

「……普通に日本です(涙)」



 そんな泣きたくなるようなデンジャラスな環境ではあるが、彼氏は運動部に入りたかった。

 当時からひょろひょろだった身体を、シュワちゃんのようなたくましいマッスルボディにしたかったのだ(その目論見は見事に失敗するのだが)。



 悩んだ結果、彼氏は一つの部活を選ぶことになる。



「……よし、卓球部に入ろう!」



 卓球部はギリギリ運動部の範疇に入るものだったし、そこまで悪い噂も聞こえてはこなかった。

 先輩たちもちょっといきがってはいたものの、他の極悪ぶりからすればかわいいもので、せいぜい隠れてタバコを吸って喜んでいるくらいだった。

 小学校からの友だちも卓球部に入るということも大きかったらしい。



 そうして彼氏は卓球部に入った。



 だけどこの選択が、後に彼氏と警察とのファーストコンタクトにつながっていくことになろうとは……この時は知る由もなかったのである。







 次回:卓球部のエースにおれはなる!! と意気込む彼氏の元に、ワイルドノースリーブ番長たちの魔の手が忍び寄る……!?



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