第12話 知人について
前回さんざん疑ってしまった 彼氏の知人……仮にチャリ男としておこう(ごめんなさい……)
実は疑うのには それなりの理由もあったりした。
それは何かというと――
「実はチャリ男(仮)、 大学時代に自転車を盗んで警察に厳重注意されてるんだよ」
「え、そうなの?」
「……うん。 若気の至りだって本人は言ってたけど」
彼氏が言うには、飲み会の帰りに終電を逃したそのチャリ男(仮)が、駅前で放置されていた自転車に勝手に乗って帰ってしまったのだという。
「僕もその場にいたわけじゃなくて、チャリ男(仮)から聞いただけなんだけど……」
何でもボロボロで鍵もかかっていない自転車が放置されていたため、つい出来心で手を出してしまったのだとか。
飲み会の現場からチャリ男(仮)自宅までおよそ15キロ。歩いて帰るには辛い距離だったし、当時は学生でお金もなかったためタクシーにも乗れない。
酔いも手伝って、困ったチャリ男(仮)がとった最後の手段なのだという。
最初は順調に進んでいたらしい。
壊れかけであったものの、ゆっくり走る分には何の問題もなかったようだ。
だけど家までの道のりをあと半分まで来たところで、その時はやってきた。
道の途中に、 警察官がいたのだ。
警察官はチャリ男(仮)を見ると、獲物を見付けたハンターのごとく、即座に止めようとした。
見た目ボロボロ、電気も点かないため無灯火、さらに乗っているのはほろ酔いのいかつい男。
「……それは、警察官も怪しく思うよね」
「……うん、しかたがないと思う」
だけど夜中であり、さらに酔っていたチャリ男(仮)は警察官の存在に気づかなかったという。
それを 逃亡だと判断したのか、警察官はチャリ男(仮)に向かってタックルをしてきたという。
「……自転車に乗ってるのに?」
「……うん、自転車に乗ってるのに」
案の定、チャリ男(仮)は自転車ごと倒されてとまった。
その時に少し怪我をしたらしいけど……まあある意味自業自得である。
その時の警察官とチャリ男(仮)の会話。
「この自転車はきみの?」
「あ、いや……」
「きみのじゃないの?」
「その、駅前に落ちていたのを拾って……」
「それは盗難ということだね?」
「はい……」
あっさりと認めるチャリ男(仮)。
その後に身体検査。チャリ男(仮)のポケットからは タバコの箱が出てきて、さらに本人も酔っ払っている(当時未成年)。
だけどそれらについては警察官もあまり追及しなかったらしい。
「まあ、大学生じゃコンパもあるし少しくらい飲むのは仕方ない。タバコもまあ……没収はするけど、ほどほどにしなさいくらいしか言えないよ」
警察官はそう言ってくれたらしい。
意外と理解のある警察官である。まあチャリ男(仮)を止める時に怪我をさせてしまったことを気にしていたのかもしれないが。
その後、チャリ男(仮)は パトカーに乗せられて警察署へ。
警察署があったのは、飲み会が行われていた現場のほど近くであったため、完全に逆戻りである。
そこで 厳重注意を受けたあとで反省文を書かされて、さらには実家に連絡をされて両親の迎えを待って、帰宅したとか。
自転車自体がどう見ても廃棄される寸前の状態だったのと、未成年だったことが考慮されて、これくらいですんだとの話だった。
ちなみに両親はブチ切れだったらしい。
「あんたの 人生もうおしまいよぉお!! このバカ! アホ! くぁwせdrftgyふじこlp(発狂) 」
まあ、どこまでも完全に自業自得である。
「……なかなか、破天荒な話だね」
「……うん」
ちなみにこのチャリ男(仮)は、他にも色々と他の人にはないエピソードを持っているのだけれど、それはまた別の機会に。
次回:彼氏と警察との初邂逅とは?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます