第14話 エロマンガ先輩

 荒廃したスラム街の中学校で、ひょろひょろの身体を鍛えるために一番穏便そうな卓球部に入ることになった彼氏。

 そこで待っていたのは、 青春の(ある意味)日々だった。




「サー!!!(愛ちゃんばりに)」




 卓球部での毎日は、彼氏にとって楽しい日々だったらしい。


 一年生同士は仲が良かったし、ボンタン短ラン姿の先輩はいたが、それでも基本的には気のいい人たちで、時にはジュースをおごってくれたりと、仲良くやっていた。

 ジャージの裾のかっこいい巻き方とかを教えてもくれたし、初めてエロマンガを貸してくれたのもこの卓球部の先輩たちだ。


 部活自体もそこそこ強かったし、彼氏は新人戦で県大会までいったらしい。



「この半年間が、 一番楽しかったよ!(力説)」

「エロマンガが? 県大会が?」

「ももももももちろん 大会に決まってるよ!?(滝汗)」



 だけどそんな彼氏のバラ色の日々も、終わりを告げる。

 ある日エロマンガ先輩たちが、暗い顔でこう言ってきたのだ。


「卓球部の一年が最近生意気だ!って、XXXが言ってきてるんだ…… 」


 出てきたXXXという名前は二年生のサッカー部員で、仮にブラック先輩としておこう。

 このブラック先輩は、当時この辺りで悪名高かった暴走族(ス●クター)の一員であるとの噂がある先輩であり、例のスギちゃん……もとい、ワイルドノースリーブ番長の配下であった。



「……おれたちとしても心苦しいんだよ。だけど心意気を見せないと上が納得しないらしい」



 上って何だ。

 心意気って何だよ。

 と首をひねるが、次のエロマンガ先輩の言葉で全ては氷解する。


「……一人 五百円ずつ集めてこいって、言われたんだ」


 何のことはない、 カンパである。

 人数分集めてこないと、エロマンガ先輩たちがヤキを入れられるらしい(死語)。

 卓球部の先輩は、そろいもそろってこの極悪中学の中ではヤンキーヒエラルキーの最下層だったのである。


「やっぱり、サッカー部が一番上だったの?」

「ワイルドノースリーブ番長がいたからね。次いで、バスケ部、野球ときて……卓球部は七番目くらいだったかな」

「運動部はいくつあったの?」

「七つかな!」

「……」


 結局のところ、みんな五百円をはらった。

 当時としては痛い出費だったけれど、それで平穏な日々が戻ってくるかと思えばしかたがなかった。

 それに何だかんだいっても エロマンガを貸してくれる先輩のことはみんな好きだったのだ。



 だけど結論として、平穏な毎日は戻ってはこなかった。

 だれかがこのカンパのことを、顧問の先生に報告したのだ。



 そこからは急展開だった。

 学校を巻き込んだ大問題に発展。警察が出てくる騒ぎになった。



「ま、まあ、普通に…… 恐喝事件だしね?」

「う、うん。いま、冷静に考えてみるとね……」




 一年生たちは一人一人、事情聴取を受けることになった。

 これが彼氏と警察との、初邂逅となるのである。








 次回:とうとう彼氏と警察が恋に落ちる……!?




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