第10話 決戦前夜

 捜査協力のために刑事がマンションまでやって来ることになった彼氏。

 犯罪捜査のプロ中のプロである刑事が来訪するということで、彼氏は非常に緊張していた。


 ***


「どんな服装をしてたらいいのかな? ここはやっぱり 自然体でいるためにいつもの服装を……」

「だめだよ! そんな 暗殺者みたいな格好じゃ!」

「暗殺者……(しょぼーん)」


 刑事は五日後にマンションのロビーまでやって来るという。

 一刻も早く詳しい事情を知りたいという彼氏のために 予定を繰り上げてくれたのだ。


「え、彼女、当日いっしょにいてくれないの……?」

「すまぬ。その日は仕事なのだ」



 私はその日たまたま仕事が入っていたため、刑事との対面は彼氏が一人で行うこととなった。

 

「うう、彼女がいっしょにいてくれるだけで不審者率三割減なのに……」


 彼氏は泣きそうな顔でそう言っていた。

 以前、私がいっしょにいる時に職質を受けたことがあるのだが、彼氏が一人で受けた時と比べて拘束時間がたったの三分の一だったらしい。

 職質を受けるなんて人生で初の出来事だったので私としては軽くショックだったのだけれど……


 あっさり解放されたことに感謝する彼氏を見て、私がいて良かったと考えるべきなのか、それとも私がいても 三割減しかならずに職質される彼氏 犯罪者臭が凄いと考えるべきなのか、その時は悩んだものだった……(長考)



 ちなみにその時彼氏は、車上荒らしをがっつり疑われていたらしい。



「とにかく、普通の格好をして落ちついて受け答えすれば大丈夫だから」

「う、うん……」


 悩んだ末、 結局彼氏はTシャツにデニム、ネコ柄のスニーカーというカジュアルなスタイルで臨むこととなった。




 ♢ ♢ ♢




 そしていよいよ刑事訪問当日。

 彼氏は 初デートを待つ中学生のような心地で刑事の到着を待っていた。


「ロビーに着いたら携帯に連絡を入れますので」


 刑事がそう言っていたので、訪問予定時刻の十五分前からスマホを握りしめ続ける(トイレに行く時も)。

 着信に出られないと、何だかそれだけで容疑者認定されるような気がしていたのだ(びくびく)

 やがて時間になり、スマホがヴヴヴヴヴィとアグレッシブに震えた。


「は、はい」

「XXXです。 今ロビーに着きました。もしあれでしたら、部屋まで行きましょうか?」

「大丈夫です! すぐに下まで行きます……!」


 部屋まで来てもらった方が楽なのだが、 自分のテリトリーに刑事を入れることを彼氏の本能が頑なに拒否したのだ。

 どこまでも犯罪者心理だと思うけれど、身に染みついてしまったものはしかたがない。


 鏡の前で服装を最終確認。


「う、うん、ヘンじゃないはず」


 真面目さを演出するため伊達眼鏡をかけ、準備は完了。






 さあ―― 戦闘開始だ(違)







 次回:いよいよ決戦……!


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