第9話 捜査協力
ある日、マンションの管理会社から彼氏のスマホに大量の着信と留守電。
すぐに留守電を聞いてみると、そこには管理会社の人から驚きの一言が。
「警察より彼氏様にお聞きしたいことがあるとの捜査協力の要請が当社に入っています。これを聞いたら至急連絡してください」
***
「……」
「……」
「……彼氏くん」
「……うん」
「……とうとう、 やっちまった?」
「やってないよ! 容疑者を見る目で見るのはやめて!?」
まあそれは冗談として。
彼氏が何かをやるような人間じゃないことは私が一番よく知っている。
何度も職質は受けたけれど逮捕されるようなことはやっていないし、日々真面目に生きている。
とりあえず彼氏、急いで管理会社に折り返してみる。
「はい、管理会社です」
「あの、先ほど電話をいただいた彼氏というものなんですが……」
「ああ、はいはい。彼氏様ですね」
すでに話は通っているご様子。
「留守電に残したと思うのですが、警察より彼氏様にお尋ねしたいことがあるとの 捜査協力が入りまして。よろしければ彼氏様の電話番号を警察にお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「あの…… 捜査協力って、何のことなんでしょうか……?(ドキドキ)」
「具体的なことにつきましては捜査上の機密とのことで詳しくは教えていただけませんでした。ただ内容は彼氏様の知人に関することであるらしいです」
…… 知人?
…… 彼氏じゃ、ない?
その一言に少しだけ心が軽くなる。
話を聞くと、捜査協力を求めている警察署はうちから車で三十分ほどの場所だった。
たしかその近辺に彼氏の知り合いが一人住んでいたはず。
酒癖があまりよくなく、色々と やらかしたこともある。すぐに頭に浮かんだのはその人のことだった。
もしかして彼が何かやらかしたのかな……?
とはいえ管理会社の人はそれ以上は知らないみたいだった。
こちらの電話番号を警察に教えていい旨を伝えて、しばし待つ。
すぐに折り返すとのことだったので、ドキドキしながら待っていると、スマホがヴヴヴヴヴとダンディに震えた。
キタ!!
高鳴る胸の動悸( これが恋か……)を抑えながら彼氏が出ると、
「すみません、管理会社ですが」
え……?
あれ、警察からじゃないの?
「警察の担当の方の親族に不幸があったらしく、かけ直すのは一週間後になるとのことですが、よろしいでしょうか?」
よろしくないよ!
そりゃあ親族の不幸ならしょうがないのかもしれないけど、 一週間もの間何が起こっているのかも分からずに過ごすなんて、あまりにも心臓に悪すぎる。
とりあえず何とか詳しい内容だけでも教えてもらえないかとお願いする。
「少しお待ちください」
再びしばし待つ。
そしてバイブレーションするスマホ。
何とかなったのかと思い電話に出る。
「もしもし――」
「もしもし。彼氏さんの電話でよろしいでしょうか? 私はxxx署の 捜査一課のXXX刑事と申します」
いきなり 警察からの電話キター!
しかも 捜査一課、しかも刑事!
やばい、思ったよりも大きな事件なのか? 彼氏の知人は何をやらかしたというのだろう……
「実はそちらのマンションで起きた自転車窃盗についてのお話なのですが……」
うちのマンションの話だった!
知人さん、ごめんなさい……
「そちらのマンションから自転車を盗み出した男が先日捕まったのですが、どうもその男がマンションの オートロックを開けてもらうのを頼んだ相手が、彼氏様(名字)だと言っておりまして……」
……はい?
え、なにそれ? どういうこと??
とりあえずそんな 窃盗犯の手引きみたいなことはした覚えがないんですが……(滝汗)
動揺する彼氏に警察はこう続けた。
「ああ、いえ、おそらく適当に思いついた名前を言っているだけだと思うのですが。 いちおう 容疑者の顔写真を確認してもらうついでに、そちらにお話をうかがいに行ってもよろしいでしょうか? 」
次回:ついに 刑事がクル――( ゚ ∀ ゚ ;)――!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます