番外プトラ 亜房の日常 中編

「ハムナ……プトラ?」


 僕は、その映画を知らなかった。


「まさか亜房先生、『ハムナプトラ』を知らないダシか? 昔から『日曜洋画劇場』でアホみたいな頻度で放送していたダシ!」


「そうなの? ボク、あんまり興味無かったからね……。じゃあ、早速一緒に観ようか」


「やったーダッシー!」


 ダッシーは、パッケージを開き、ディスクを取り出す前に一礼する。恐らく、『ハムナプトラ』への敬意を表しているのだろう。それから漸くディスクを取り出して、DVDプレーヤーの中へ。


 ダッシーの、再生ボタンを押す手が微かに震えていた。


 そしてついに、『ハムナプトラ』が始まった。


 最初は、何気なく画面をただ見つめているだけの作業であったが、『ハムナプトラ』は面白かった。


 ドキドキハラハラで、途中からダッシーに至っては号泣していた。流石にボクは、そこまで心が動かされる事はなかったけど……。


 だけど、不思議な感覚だった。


 何だか、天に昇るような感覚……。


 これが、藍染 惣右介が味わっていたものなのだろうか?


 気付いたら、あっという間にエンディングを迎えていた。


「何度観ても泣けるダシ……! 『プトラ』こそが世界の真理ダシ!」


 ボクもダッシー程では無いが、何か運命的な物を感じてしまった。


「ダッシー……もし良かったら……もう少しボクにこのDVDを貸してくれないだろうか?」


「もちろんダシ! 亜房先生も世界の真理に触れるダシよ! 新たなる信者が増えて気分は最高ダシ! 満足したから帰るダシね! ダシ汁ブシャー!」


 ダッシーは、興奮のあまり床をぶち破って帰って行った。


 あれ、もう帰るんだ?


 てか、床どうしよ?


 下に住んでいる人、大丈夫だろうか?

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