番外プトラ 亜房の日常 前編
「滲み出す混濁の紋章! 不遜なる狂気の器! 湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き、眠りを妨げる! 爬行する鉄の王女! 絶えず自壊する泥の人形! 結合せよ! 反発せよ! 地に満ち、己の無力を知れ! 破道の九十『黒棺』……!」
誰もいない部屋の中で叫んだ。
ボクは、
お金や地位、名誉……。
この世界が退屈だった。
だからせめて、藍染 惣右介の様になりたかった。ボクには、彼の気持ちがなんとなくだけど理解出来る。
ボクも、天に立ちたかった……。
だけど……。
何だよ、ボクのキャラは!?
なんで、ボクが首輪が似合う男になってるの!?
あり得ないでしょ!?
人間ドックのパンフレットが、首輪を
え……ボクってやっぱりそんな風に見えますか!?
てか、見えてたとしても、せめてボクの許可いるよね?
しかもこの間、何気に病院の売店に行ったら、何種類ものボクの同人誌が山積みにされてたんですけど!?
昔から中性的って言われてたけど、まさか大人になってもこのキャラから逃れられないなんて……。
あーだこーだ、心の中で叫んでいた時だった……。
突然、玄関のドアがもぎ取られる。一瞬、どきりとした。
「ダシダシダシ! 亜房先生、遊びに来たダシよ?」
「ダッシーか……。驚かさないでくれ。てか、ドア壊さないでよ。」
「レオパレス21の強度に問題があるダシよ。」
それを言われたら、言い返す言葉がない。ダッシーは、取り外したドアをぐしゃぐしゃに丸めると、
ドア、これからどうしよう?
「そう言えば、亜房先生の『黒棺』の詠唱が1、2キロ先まで聞こえていたダシよ?」
「え、嘘!? そんな、恥ずかしいよ……!」
『レオパレス21』の壁の薄さを舐めていた。てか、それ以前に何故、1、2キロ先まで届くんだよ。
「照れてる顔も可愛いダシね。」
「止めろよ、怒っちゃうぞ!」
「そう言う所がますます可愛いダシよ?」
ボクは、何を言っても駄目なようだ。
「ところでダッシー、遊びに来たって言ってるけど、何するつもりなんだい?」
その言葉を待っていましたと言わんばかりに、ダッシーは、持っていた鞄の中から、とある一つのDVDを取り出した。
これが、ボクと『ハムナプトラ』の初めての出会いだった。
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