土曜日

47プトラ 未知の材質

 翌朝。


 俺らは、家を失った。これから、新しい家を探さなければならない。見つかるまで、ナツの家に泊まらせてもらうことになった。


 今度は、ドアも頑丈で、壁も厚い家にしよう。


 やはり、素手で破壊できる家に住むと言うのは間違いだったのだ。


「どこにも無いね……。」


「無事だと良いんだけどな。」


 今、俺とリンゴは、瓦礫の山と化した元『レオパレス21』で、リンゴの宝である『ハムナプトラ』のDVDを探している。なんとか無事に見つかってくれれば、ナツの家で『ハムナプトラ』観賞会を行うことができるのだ。


 正直、『ハムナプトラ』なんて二度と観たくはないが、リンゴと一緒に観る約束をしてしまったので、一人の男としては、その約束を破る訳にはいかない。


『レオパレス21』の残骸は軽かった。まるで、紙か、発泡スチロールのような未知の材質である。これならば、『ハムナプトラ』のDVDも無事に生き残っているように思えた。


「あ……!」


 リンゴが突然、地面にしゃがみ込んだ。その周辺の残骸を手で軽く払い除ける。


「ダンゴ……!」


 俺は、急いでリンゴの側へと駆け寄る。


「あ……あったよ……!」


 そこには、土に塗れた『ハムナプトラ』のDVDパッケージが、確かに存在していた。リンゴは、それを両手で優しく拾い上げる。


「ありがとう……。本当にありがとう……。」


 リンゴは、『ハムナプトラ』のDVDパッケージをしっかり抱き締め、喜びのあまりに泣き出してしまった。


 無事に生還していた『ハムナプトラ』にひたすら感謝の言葉を送り続ける。


 ああ、今夜は地獄だ。


 間違いない。


 恐らく、この前の拷問と同じく、延々と『ハムナプトラ』だ。


「ダンゴ……。一緒に『ハムナプトラ』観てくれるよね!?」


『ハムナプトラ』なんて観たくないが、リンゴと観る『ハムナプトラ』は、セーフと言うことにしておこう。


 これから先も、リンゴとならば観れる。


 そうやって、前向きに行こう。


「ああ、一緒に今夜は、レッツ……『ハムナプトラ』だ!」


 なんだか、『ハムナプトラ』も……悪くないかもしれないな……。

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