46プトラ レオパレス

 病院からの脱出に成功し、前に広がる駐車場の中心へと走る。建物の近くにいれば、崩壊した際に巻き込まれてしまう。


 まだ油断はできない。


 病院に背中を向けて走っている最中、とうとう凄まじい空気の揺れと共に、『亜房あぼう総合病院』は、崩壊を始めた。


 1階部分が崩れ去り、それに伴って2階、3階と順番にぺちゃんこに潰れて行く。


 砂埃が辺り一面に立ち上がって、かなりの広範囲に渡って建物の一部が飛散した。もう少し近くにいたら、巻き込まれていたかもしれない。


「ふう……。なんとか、助かったな。」


 俺は、オネェ女を地面に置いた。


「皆さん、ありがとうございます。亜房あぼう達が目を覚ましたら、培養に成功した『プトラキラー細胞』の散布と、『ハムナプトラムダ』の波長を使って人々を元に戻します。リンゴちゃんの『プトラキラー細胞』は、特に強力なので、恐らく、上手く行けば1日、2日で元通りになる筈です。」


「ありがとう、中村さん。よろしくな。」


「いえ、それでは皆さん、お元気で。どうか、少しでも早く、元の生活へと戻ってください。」


 俺らは、お世話になった中村さんに別れを告げると、崩壊した病院付近に止めてあるタクシーへと向かった。かなり土埃を被っているが、辛うじてそれ以外に損傷は無い。


 再び、死の『マリオカート』のスタートである。


 俺は助手席に、リンゴは後部座席、そしてナツが運転席へ。


「ヒアウィーゴォォォ!!!!」


 ロケットスタートだ!


 ナツは、早速ハンドル操作を誤り、亜房あぼう先生を轢いたように思えたが、気のせいだと言うことにしておこう。


「ナツの運転、豪快だね!」


 リンゴは、後部座席で喜んでいる。豪快なのは認めるが、恐怖は無いんだろうか?


 結局ナツは、最後まで全速前進、あっという間に大学周辺へ辿り着いてしまった。


 ナツは、俺とリンゴの住む、『レオパレス21』まで送ってくれるそうだ。


 しかし、そろそろ俺らの『レオパレス21』が見えて来てもおかしくない筈なのに、中々見えて来なかった。


 不思議に思いつつも、段々とその原因が判明して来た。


「なん……だと……!?」


 俺は唖然とした。なんと、我が『レオパレス21』が、跡形も無く崩壊してしまっていたのだ。


 恐らく、『亜房あぼう総合病院』が崩壊した際の、揺れや衝撃が、数キロメートル離れたここまで届いたのであろう。


 仕方なく、この日はナツの家で夜を明かした。

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