39プトラ 人に言えない趣味

 俺とリンゴは、驚愕の光景を目の当たりにして固まった。


 何だ、この狂った集団は……!?


「あ……。」


 俺らに気づいた亜房あぼうは、何事も無かったかのように立ち上がった。


 黙って、首輪を外し、溜息をつく。


 もしかして……そういう趣味があるのですか?


「あらやだ! ボス! アタシらの考えた『ババ抜きで負けた人が奴隷ゲーム』を見られたじゃない!」


「だからボクはしたく無かったんだよ……。」


 何だよその、死のゲームは。


 さくもと呼ばれていた金髪のオネェと、ダッシーオネェが椅子に座っており、その前のテーブルには、トランプが散らかっている。馬鹿と天才は紙一重と言われるが、しかし亜房あぼうにも、そう言った面があったとは……。


「ところで君達……。何で脱出できたんだい?」


 冷静さを取り戻した亜房あぼうが、白衣の乱れを直しながら俺らに尋ねる。


 いやそれよりも、お前ら一体何をしていたんだよ。実験はどうした? 『ババ抜きで負けた人が奴隷ゲーム』って、どんな発想だよ。変態ならではの、恐ろしいゲームだな。


 そして、何気に亜房あぼうに首輪が似合っていた。


「とにかく、あなた達の野望はもう終わりよ。みんなを元に戻して、普通に『ハムナプトラ』を観せてちょうだい。」


 リンゴは、いつもより低いトーンの声で言う。それだけ怒りの感情が湧いているようだ。さっきまで、『ハムナプトラ』を観れて大興奮であったが、やはり、大好きな『ハムナプトラ』を利用されていることに関しては、いい気分はしないのであろう。


「ダシダシダシ! ボス、『ババ抜きで負けた人が奴隷ゲーム』の続きは、コイツらを処分してから続けるダッシー!」


「えっ、まだ続けるの? またボクが負けるじゃん。次、負けたら7連敗だよ。」


 亜房あぼうは、ずっと奴隷らしい。きっと、そう言う運命なのだろう。


「で、君らは何でここにいるの? 誰かボクの仲間に裏切り者でもいたのかな?」


「さあな。とりあえず、お前ら変態集団は俺が倒すぜ。みんなを元通りにして、『プトラ』から解放してやる!」


 2対4で、頭数で言えば、こちらが圧倒的に不利である。しかし、さっきの『ババ抜きで負けた人が奴隷ゲーム』を見てしまった感じだと、何だか行けそうな気がして来た。

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