37プトラ 決意

「あ……中村さん……。」


 俺は、女神の名前をポツリと呟いた。


 中村さんは、部屋に入って来ると、鉄格子の鍵を、静かに開ける。


「この世界を救えるのは、あなた方、二人しかいません。」


 中村さんは、俺らの元へと寄って来た。そして、俺らが拘束されている椅子の、錠の鍵をも開けてくれる。


 およそ24時間ぶりに解放される体。


「中村さん……。俺らの味方なのか?」


 俺は、緊張してしまっている肩や首を動かしながら尋ねた。まさか、こんな形で助けられることになるとは。やはり、彼女は女神であった。命の恩人だ。


「味方に決まってるじゃないですか。でも、どうかお願いです。亜房あぼう先生を……いえ、亜房の『全人類プトラ化計画』を終わらせてください。それは、『プトラキラー細胞』を持つあなた方にしか出来ないことです。」


 女神からのお願いか……。


 今、こうやって助けてもらったんだ。


 答えは決まっている。


「任せてくれ。必ず元の世界へと戻す。」


 これが俺の揺るぎない決意だ。


 そして……。


「リンゴ……。この戦いが終わったら、俺と『ハムナプトラ』を観よう。何度も何度も繰り返し観よう……!」


 人生で、一度は言ってみたいセリフだった。ちょっぴり、違う様に感じるかもしれないが、これでいいんだ。


「ダンゴ……。ありがとう!」


 リンゴも満面の笑みを浮かべる。


「答えは決まったようですね。ここは、病院の地下です。この部屋を出て、廊下を真っ直ぐ進んだ所にある部屋に、亜房あぼうとその部下オネェ達がいる筈です。ダンゴくんのお友達、ネコちゃんは、私が必ず面倒を見ておきます。どうか、ご無事で。」


「ああ。」


 俺は、リンゴの手を握り締め、椅子から立ち上がった。


 必ず、終わらせてやる。


 ナツ、ライカ、中村さん……。


 そして、地面に転がる『熊のムキさん』……。


 ちょっとの間、待っていてくれ。

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