金曜日

36プトラ 黒プトラ

 一体、昨日から何度『ハムナプトラ』を観させられたんだ?


 しかも、あのダッシーオネェは、8時間を過ぎた辺りから、1.25倍の速度で『ハムナプトラ』を再生しやがった。


 もう、俺の精神は限界だった……。


「はぁ……はぁ……もう……殺して……くれ……。」


「ダシダシダシ! ちょうど今、24時間経ったダシよ。しかし、まだ意識があるとは驚いたダッシー。」


 ダッシーオネェは、鉄格子の向こうから、疲労困憊の俺に対し、声を高々に上げて嘲笑う。


 しかし、一方。


「もう終わりなの!? プトラ、もう終わりなの!? ねぇ、まだ観たいよ! まだプトラが足りないよ! ねぇ!?」


 リンゴは、いつになく興奮していた。何なんだよコイツは。


「そんなバカなダシ! あれだけ『ハムナプトラ』を観ても精神異常が見られないとは、いくらなんでもおかしいダッシー! 結城 リンゴの『プトラキラー細胞』は、化け物ダシか!?」


 驚きを隠せない様子のダッシーオネェ。


「これは、ボスに報告ダッシー!」


 慌てて俺らを拘束している部屋から飛び出して行った。そして、『ハムナプトラ』の24時間放映も終わり、急に静けさが際立って来る。


「てか、ダンゴ……? どうしたの? 顔色が悪いよ?」


「リンゴ……お前も……脳筋だろ?」


「え……?」


 リンゴは、全く何の事か分かっていない様子であった。


「プトラァァァ!!!! 破道はどうの九十『黒プトラァァァ』!!!! うぉぉぉおおお!!!! 藍染あいぜん 惣右介そうすけに成りたプトラァァァ!!!! 天に立ちたプトラァァァアアア!!!! あまり強い言葉を遣うなプトラァァァアアア!!!!」


 ナツは、『プトラ菌』のせいで、完全に壊れていた。


 絶対絶命か……。


 俺は完全に諦めていた。


 だが、この時までは、すっかり忘れていたのだ。


 あの、を……!


 ダッシーオネェが出て行ったばかりの扉が、静かに開く。


 なんと、そこに立っていたのは、中村さんであった。


「遅くなってごめんなさい。リンゴちゃん、ダンゴくん、今、助けるわ。」

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