31プトラ 熊のムキさん再び

 俺は夢を見ていた。


『ハムナプトラ』が無い世界の夢を。


 だけど、段々と周りが『プトラ』化して行き、やがて全てが『プトラ』になる。


 追い詰められていく俺。


 だけどそんな中、俺の名を呼ぶ声が聞こえて来た。


「ダンゴ……! ねぇ、起きてよ! ダンゴ! ねぇ!?」


 激しい頭痛がする。重たいまぶたを開け、濁っていた視界が段々と晴れて来る。


 そうだ、俺はオネェ達に捕らえられたんだった……。


 眠いとか、頭が痛いとか言っている暇は無い。


「ダンゴ! 目が覚めたんだね!?」


 この声は……。


「リ……リンゴ……?」


 俺を呼ぶ声の主は、リンゴだった。隣に、リンゴがいた。


 電気椅子のような所に括り付けられている。真っ白で、冷たい椅子。


 どうやら俺自身も、リンゴと同じ椅子に縛られているようだ。


「やっと目が覚めたね? 私の『黒棺くろひつぎ』でも破壊できない椅子だわ……。」


 そして俺を挟んで、リンゴとは逆の所に、ナツも椅子で括り付けられていた。


 しかし辺りをよく見回すと、ライカだけが、俺らの前方で自由に動き回っていやがった。


『チャオちゅ〜る』の空袋も地面に落ちている。猫だけは、優遇されているようだ。スクワットのポーズをした『熊のムキさん』の玩具までもが転がっている。


 また、そんなことよりも、恐ろしいことに気がついた。ここは、独房の中だ。前方には、部屋を半分に仕切る鉄格子がある。


 椅子に縛られている上に、部屋から脱出することなんて不可能だ。


「ダンゴ……。助けに来てくれたんだね。ありがと。」


「いや、こうやって仲良く皆んなで捕まってしまったんだ。助けに来たとは言えないよ。」


「私の黒棺くろひつぎでも椅子を破壊できないなんて……! すまぬ……。」


 まだ言うか。相変わらず、ナツのメンタルが羨ましい……。俺にも、分けてくれ!


「ダシダシダシ!」


 三人で会話を交えていた時だった。


 あの奇妙なダッシーオネェが鉄格子の前に現れた。

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