21プトラ オネェ

 俺は念の為、モニターで誰が来たのかを確認する。


「なっ……!?」


 俺は思わず声を漏らした。玄関の前に立っていたのは、見知らぬ若い金髪の男と、口紅の濃い女。


 一体誰だろう。二人とも黒いスーツを着ている。怪しい以外の表現が思いつかない程に怪しい。


有江ありえ ダンゴ! いるのは分かっているのよん。危ないことしないから出て来なさいッ。」


 女の方が、オネェ口調で怒鳴る。正直、性別不明。『マツコデラックス』のような、男らしい声質ではある。


 危ないことしないって、どう考えても今にも襲って来そうな勢いだ。そのオネェ女は、モニターに顔を近づけている為、真っ赤な口紅がたっぷり塗られている唇が大きく映し出されている。


「ダンゴ……? 誰? 知り合い?」


「いや、知らねぇよ、こんなオネェ女。」


 俺は、突然の怪しい二人組の来訪にかなり恐怖を感じていた。


「さくも! アンタも何か言いなさいよ!」


「え、月岡つきおか姐さん! アタシも言わないとダメなのん?」


 隣の男だと思っていた男もオネェだった。


「当たり前でしょ。バカ言ってるんじゃないわよ! 何としてもボスの所に二人を連れて行くのよ!」


 ボスの所に? え、このオネェ二人は、もしかしてマフィアか何かですか?


 どう考えても物騒なことが起ころうとしている。


「ナツ! なんかヤバイのが来たぞ!」


「に、逃げた方がいいよね? 明らかに、私の『円』の中に怪しい二人が入って来てるもん。」


「いや、お前の『円』は4メートルが限界なんだろ!? 違う、少なくとも、ここは『レオパレス21』だから誰でもドア越しに人がいることぐらい分かるって!」


 そう、ドアを挟んでの会話の筈だが、ドアが薄すぎて、外の二人の会話が完全にクリアに中まで聞こえて来る。つまり、逆を言えば、俺らの会話もオネェ二人にはまる聞こえな訳だ。


「さくも! こうなったら、このドアを破壊してしまいなさい!」


「月岡姐さん。アタシの力じゃ、無理だわ。そんな乱暴な事、女の子にはできない。」


「バカ言ってるんじゃないわよ! あなたは一応、体は男なのよ! それにここは、『レオパレス21』なの。さっさとやりなさい!」


「んもぉ〜。仕方ないわね。やるわよ。」


 やばい。ピンチだ。


 さくもと呼ばれるオネェは、俺の家のドアノブをしっかりと握り締めた。


「そぉれ!」


 そして、勢いよく、俺の玄関のドアが周囲のコンクリートごと剥がされてしまった。


 ヤバイ二人組みと、しっかり目が合う。


「初めまして。ダンゴちゃん、中々可愛い子じゃない? 乱暴しないからこっちにいらっしゃい。」

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