20プトラ 来訪者

 俺とリンゴ、ナツは、普段から本当に一緒によく遊ぶ仲だ。


 大体、リンゴの家に集まって、リンゴが一人で『ハムナプトラ』を観ている。その横で、俺とナツは、何か適当にそれぞれゲームをしたり、漫画を読んだりしている。


 みんなバラバラなことをしていて意味が無いように思うかもしれないが、一応、リンゴが『ハムナプトラ』を観終わった後は、みんなで協力して、その日、大学の講義で出された課題やレポートを片付けたりするのだ。


「でも、ヤバイよね。絶対、今、世の中おかしなことになってるって。まさか、大学の講義までプトラ化するとは思わなかったよ。」


「それな。でも、本当にナツが居てくれて助かった。俺一人だと、確実に精神崩壊してたって。」


 そう、ナツは今の俺にとっては唯一の救世主である。やっと現れた、理解者なのだ。


 先程の、『物理学』の講義の際、周りの生徒はこれまでにないぐらい真剣な眼差しで、ヨボヨボの教授の話に喰らい付いていた。


 これまで、皆、隠れてスマホを弄ったり、寝てたりしていたのが、『ハムナプトラムダ』の言葉一つで態度が急変した。


 そこまで、『ハムナプトラ』が人々に与える影響は大きいのだろうか?


 あれやこれやと、ナツと愚痴をこぼしながら歩いていると、俺の偉大なる『レオパレス21』へと、ようやく到着した。


 階段を登り、廊下を進むと見えてくる俺、リンゴの部屋。


「リンゴの部屋のドア、壊れてるじゃん。」


「ああ、色々あってな。」


「そうなんだ……。まあ、よくある話だよね。」


 俺は、鍵を開け、ドアを開ける。


「お邪魔します。」


 ナツは、きっちりと玄関で靴を揃えて、家の中へと入って来た。


「あ……! ライカじゃん!」


 ナツが、俺の部屋に居座っていたライカの存在に気がついた。


「ライカを一人にする訳にもいかないし、ドアも無いし、俺が預かってるんだ。」


 俺とナツは、しっかり留守番をしていたライカの元へと向かった。


「はむにゃ〜。」


 しかし、今のライカは、ナツの知っているライカではない。『ハムナプトラ』の呪いにかかった内の一人だ。


「えっ!?」


「コイツも、『ハムナプトラ』の呪いにかかってしまったんだ……。」


 するとナツは、おもむろにライカを抱き上げた。


「猫なのに可愛そう……。嫌だよね、『ハムナプトラ』の呪いにかかってしまって……。」


 突然、泣き出すナツ。確かに泣きたくなる気持ちは分かる。俺だって泣きたいさ。


「ぷとぷとぷとにゃ〜。」


 ライカは、ナツの抱擁にびっくりしたのか、変な声を出しながら、ナツの腕を軽く引っ掻き始めた。


 そんな時、ピンポーンと部屋のインターフォンが鳴る。


「あれ、もしかしてリンゴか?」


 もう……帰って来たのだろうか。

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