19プトラ 867ナノメートル

 この教授、しれっと恐ろしいことを言い放ったぞ。


「えっとですね、ハムナプトラムダはですね、波長が、867ナノメートルの物をそう呼びます。つまり、赤外線の一種なんですけどね。ぴったり867ナノメートルの波長は、我々人間にとって多大なダメージになるようです、はい。」


 そんなバカな。


 これがノーベル物理学賞だって? せいぜいイグノーベル賞か何かの間違いだろ。


「ですので、皆さん。これからはですね。非常に危険ですので、波長が867ナノメートルの物は、決して扱わないようにお願いします。政府からの通達も来ています、はい。」


 政府も関係しているのかよ。ますます、『ハムナプトラ』が意味の分からない方向へと進んでしまっている。しかし、教授の話を聞いた他の学生達は、頷きながら必死にメモを取っていた。


 今のどこに有益な情報があったんだよ?


「それではですね、今日の特別講義はですね、実はこれからが本題なんです。」


 教授は、教室の電気を消した。


 騒めく教室。


 一体何が始まるんだ?


「それではこれより、『ハムナプトラ』観賞会を行いたいと思います。」


 その言葉を耳にした学生達による、教室が壊れるかと思うほどの歓声が沸き起こった。これが『レオパレス21』ならば、間違いなく崩壊していただろう。


 俺とナツは、無言で顔を合わせると、ヨボヨボの教授にバレないように、そっと教室から抜け出した。


 とうとう大学の講義までもが、プトラ化してしまった。俺らには、もう逃げ場所は無いのだろうか?


 未だに、元いた教室からは凄まじい歓声が漏れている。


「ねぇ、ダンゴ? 今日、リンゴが退院するんでしょ? 帰って来るまで、ダンゴの家に居させてくれない? 私は気分悪くて死にそうだよ。」


「ああ、いいよ。俺も疲れたよ。リンゴが帰って来るのを待とう。」


 よし、ナツも巻き込んで、3人で『ハムナプトラ』だ。


 ナツと共に、我が『レオパレス21』に向かうことにした。

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