18プトラ 大学の講義もプトラ

「もしかして、ダンゴも『ハムナプトラ』、見飽きた感じ?」


「当たり前だろ……! あれだけ、テレビで『ハムナプトラ』やってるんだぜ?」


「良かった……。おかしくなったの、あたしだけかと思ったよ。ダンゴも仲間か……。」


 やはりそうだ。


 ナツは、俺の唯一の味方だ。世の中、誰もが『ハムナプトラ』に適応していた為、全てが敵にすら思えていた。そんな中、俺と同じ境遇のナツが居てくれて、つくづく助かった。


「やっぱり今、世の中おかしいよな。」


「あたしもそう思う。これは呪いだよ。『ハムナプトラ』の……。」


 そんな二人の会話を遮るように、授業の開始を告げるチャイムが鳴った。それと同時に、ヨボヨボの『物理学』の教授がドアをゆっくりと開け、中に入って来た。


 転けないか、見ていて心配になる。


 しかし時間はかかったが、彼は無事に教壇の上に立つことに成功した。


「ええー、それではですねぇ。えっと、今日はですね。いきなりですが、特別講義です。はい。」


 突然の宣告に騒つく教室。特別講義とは一体なんだ?


 教授は、細い手で赤いチョークを掴むと、黒板に大きく文字を書き始めた。手も若干だが震えている気がする。


『Hλ』


 なんだ……これは?


「先日ですね、ノーベル物理学賞は恐らく確定するであろう、世紀の大発見があったんですよね。」


 世紀の大発見……?


 そんな話、初めて聞いたぞ。


「これは……『ハムナプトラムダ』と読みます。」


 バカヤロォォォオオオ!!!!


「バカヤロォォォオオオ!!!!」


 なんで、講義までプトラ化してるんですか!?


 しかも、ナツに至っては、心の叫びが声に出てしまっているし!


 確かに叫びたい気持ちは分かるよ!?


 てか、何故これが世紀の大発見なんだよ!?


 え、ノーベル物理学賞!?


 本当に『ハムナプトラ』はどうしてしまったんだ!?


「簡単に説明しますとね、ハムナプトラムダの波長を長時間浴びると、死んでしまいます。はい。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る