水曜日

8プトラ 朝もプトラ

 翌朝。


 身体が言うことをきかない。俺の精神は、極限にまで磨り減っていた。あのナレーションの声が頭の中から離れない。


 なんで、こんなにも『ハムナプトラ』なんだ。


 俺は、ベッドの中で仰向けのまま、顔を両手で覆っていた。何だか頭が重い。


 全ては、連日の『ハムナプトラ』のせいだ。


 駄目だ。このままだと本当に狂ってしまう。俺は、ベッドから勢いよく飛び起きた。


 とりあえずテレビでも点けよう。暗い朝はうんざりだ。こんな朝は、『ZIP!』に限る。ます 太一たいちアナウンサーの声でも聞いて癒されよう。


 モコズキッチンが終わってしまったことは、本当に悔やまれるが、今の俺にとっては、ますアナウンサーの声でも十分だった。


 しかし、テレビから聞こえて来たのは、無情にもであった……。


『さぁ、今朝のZIP!は、なんとぉ! 好評につき日曜洋画劇場を放送するぞぉ! しかも、やっぱりハムナプトラだぁ! さらにゲストには、ますアナウンサーを招待したぁ!』


 バカヤロォォォオオオ!!!!


『日曜洋画劇場』、なんて事をしてくれたんだ!?


 朝の看板番組の『ZIP!』だぞ!?


 全国の主婦を敵に回すんだぞ!?


 画面中央には、ニコニコ顔のますアナウンサーが映っている。彼は、果たして正気なのだろうか?


 そして再び、例のナレーションが喋り始めた。


『それではぁ、朝からドキドキハラハラのハムナプトラァ! 行くぞぉ……テレビの前の皆さんもご一緒にぃ……! せーのぉ……!』


『ZIPトラ♡』


 バカヤロォォォオオオ!!!!


 ますアナウンサー正気かよ!?


 バッチリ、『ZIP!』のポーズを決めやがったぞ!?


 自らの看板番組を『日曜洋画劇場』に売っていいのか……!?


 俺は、そっとテレビを消した。

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