火曜日

3プトラ リンゴがいない教室

 俺は昨夜、余りのショックで気を失っていたようだ。まさかの二夜連続の日曜洋画劇場……いや、二夜連続のハムナプトラ劇場とでも言うべきだろうか?


 時計の針は、午前9時を過ぎた頃。


 俺はベッドの上で、仰向けに倒れた状態で目を覚ました。布団は着ていない。


 また、大学は遅刻だ。リンゴは、俺を起こしに来ることはなかった。やはり昨日のことを怒っているようだ。


 憂鬱な気分に包まれながらも、流石に今日は大学へ行かなければならないと思った。2日連続で休むのは、後に影響する。重たい体を起こし、大学へ行く準備を行う。


「はぁ……。何でこんなことになったんだろ。」


 俺は、誰もいない部屋で一人呟いた。とりあえず着替えて、歯も磨いたことだし、大学へ向かおう。2限目がリンゴと同じ授業だし、その時に俺から話しかけてみよう。


 俺は、カバンを持ち、スニーカーを履き、勢いよく外へと飛び出した。さっさとモヤモヤを晴らしてしまいたい。その一心だった。


 俺とリンゴは、同じアパートに住んでいる。しかも、部屋も隣だ。当然リンゴは、既に大学へ行っているだろうな。いつもは一緒なのに。


 俺は、駆け足気味で大学へと向かった。普通に歩いて、5分もかからない距離の処に住んでいる。でも、何だか今日は遠く感じた。駆け足気味なのに、何故か大学までの道のりが長い。


 頭の中は、『リンゴ』のこと。そして、『ハムナプトラ』のことで一杯だった。


 二限目は、生物学。


 今、筋肉について俺らは学んでいる。大学の敷地内の隅っこにある、小さな建物で行われる壮大な授業だ。


 俺は、その建物へと辿り着くと、を目指す。それは、俺とリンゴがいつも隣同士で座っている席だ。


 早くリンゴに会いたい。会って、しっかり『日曜洋画劇場』の異変について話したい。


 だけど、いつもの席にリンゴは居なかった。


 なんだか不吉な予感がする。


 とにかく、胸騒ぎがしたのだ。

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