第4話サラマンとラスエルの日常その3

お風呂から上がって、さてと、バスタオルをとると

「うひ~~~」

ラスエルが裸で駆け出した。

「こ、こら~!戻ってきなさい~!」

びしょびしょのまま、ラスエルは家のあちこちを濡らしていく。

うおおお、これはまずい。ここまでやんちゃだったとは!

ソファーでぴょんぴょんして、部屋という部屋を覗いて、この横暴者はとどまることを知らない。

山本は素早く体を拭いて、タオル1枚でラスエルを探し始めた。

「ラスエルー!って、もう家の中がびしょびしょじゃないか。ラスエルー」

「うひひひ~」

寝室の方から笑い声が聞こえる。ひやっとする山本。

寝室の扉が開いている。これはもしやすると

「ようこそ~お布団の楽園へ!」

「うがー!濡れた体でお布団にぃ!!」

ラスエルは洗面所へと連行された。体を真っ白なふわふわタオルで拭かれながら

「どうして悪いことするのかなぁ?」

「だって!やってみたかったんだもん!」

「今日、買ったおやつはしばらく食べさせてあげません!」

「うげええええ!!!」

「お布団濡れちゃったじゃないか、どうするの?」

「なんとかしてー!」

代えの布団を出すかと考える。あと、畳も濡れたのも痛い。早く拭かないとシミになるなぁ。

「ラスエルは私より年上なんだよね?」

「3000億歳の幼児です!うひひ」

この子は、ずっとこういうことしてみたかったのかしら。愛が試されているのかしら?

ラスエルの髪を乾かして、パジャマを着せた後、ラスエルが濡らしたところの後始末をした。やはり、お布団が湿ったのが辛い。乾燥機に放り込んでおこう。


ラスエルに歯を磨かせ、

「仕上げはおと~さん!」

ということで、歯を磨いてやる。歯並びがとても良い。羨ましい。

歯磨き粉は結構ごっくんちょしたみたいだ。あらあら。


大きなお布団に一緒に入る。

「さぁ今日は寝ようか」

「まだ夕方だよ!」

「寝かせておくれ・・・」

「仕方ないなぁ!ところでおとうさん、寝るってどうやるのかな!?」

あぁ。そうか、ラスエルは自発的に寝たことがないんだな。

「じゃあ、とっておきの眠る方法を教えてしんぜよう」

「まず、呼吸をゆっくりにします。へそ下にある丹田を意識しながら、腹式呼吸を繰り返します」

「そうすると、次第に副交感神経が優位になります。意識が遠のき始めたら、そのまま身を任せ、眠りの世界に入ります」

「実践的!普通の親がこどもに話すのと違う!」

「いや、だってほら、羊の数を数えたりしてたら、逆に目がさえちゃうんだよね。だから、本当の眠り方というものを教えてあげたのさ」

「なでなでしててあげるから、やってごらん。明日からはお父さんが寝る前に何かお話をしてあげよう」

「お話ぃ~!」

腕に捕まるラスエル。その小さな頭をなでなでしながら、ふんふんふん♪と鼻歌子守唄を歌う山本。はしゃぎ疲れていたのか、それとも眠る方法のおかげなのか、二人は夢の世界に落ちていった。そして、また夢の中で二人は出会う。

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