第51話 一つ屋根の下で過ごすのは同じ学校の生徒会長(10)

 学校の職員室に俺と井坂で乗り込んだ。

 目的は勿論、同好会を作ること。

 その為に必要なのはまず同好会を作る為の紙がいる。

 その紙がまずどこにあるのかが分からない。

 生徒会にありそうだけど、あの会長がそれを許すとは思えない。

 なので、職員室にやってきた。

 本来ならば川畑も連れて来たかったのだが、今日は動画を作るので忙しい為、参戦できなかった。あいつみたいに人気がある奴がいた方が色々とすんなり行くからな。結局のところ顔面偏差値がいい奴がいた方が物事上手くいくようにこの世界はできているのだ。

 参加できなかったのはしょうがない。

 俺と井坂で知り合いの先生となったら、担任の先生しかいない。

 俺は気が進まないまま担任の先生の前まで来た。

「先生、同好会を作りたいんですけど」

「え?」

 先生は間抜け面を晒す。

 まあ、普段から他人と接することがなく自発的に何もやろうとしない生徒二人がいきなり職員室にやってきて、同好会作りたいですって言ってきたら、俺が逆の立場であっても困惑するだろう。

「……ああ、難しいんじゃないのかな、同好会か」

「…………」

「…………」

 取り合えず取り繕って何か熟考しだす。

 俺達が顔を見合わせる時間があるぐらいには考え込んでいた。

「同好会であっても先生がつかないといけないけど、誰かアテはあるのか?」

「いえ、これから探します」

「そうかー」

 先生は姿勢を崩す。

 どうやら俺達の考えが適当な考えだと見抜いたみたいだ。

 まあ、確かにそうだから否定はできないんだけど。

「まあ難しいと思うぞ。ほとんどの先生が何かしらの部活動顧問だからな。掛け持ちになるんじゃないのか? それこそ新任の先生ぐらいしか顧問になっていない人はいないんじゃないのかな」

「それって誰がいますか?」

「あー、分からん。調べとくな」

 そのまま先生は静止する。

 どうやらこれで話は終わりの合図のようだ。

 あまりにもあっさりと終わった。

「あの、紙とかあります? 同好会を作る時に提出する用の」

「あ、ああ、一応渡しとくな。決まったら見せてくれ」

 そう言って先生は紙を渡してくれたので、ありがとうございますと言って、職員室から出て行く。

「失礼しました」

「失礼しました」

 二人で職員室から出て廊下の端に寄る。

「調べると思いますか?」

「あいつは絶対に調べないな。いかに効率よくサボることしか考えていないからな」

 もうあの言い方からして適当にやっておきます感が出ている。

 自分が色んな先生に話を聞くのが面倒に違いない。

 あんな奴を頼っても意味がない。

 俺たち自身で話を聞いていかなきゃ。

 ただ、俺はそんな度胸がないからな。

 先生一人一人に話しかけるなんてことができない。

 そんなのコミュニケーション能力が長けている奴にしかできない芸当だ。

 俺にしかできない方法で確認してみるか。

「よし」

 俺は拳に力を込めて気合を入れる。

 職員室の扉を勢い良く開ける。

「失礼します!! すいませーん!!」

「なっ――」

「えっ――」

 職員室に響き渡る大声に担任の先生と井坂が驚く。

 そんなのお構いなしに俺は叫び続ける。

「この中で俺達の同好会の顧問になってくれる人はいませんかー!!」

「こらあっ!! 五月蠅いぞ!! 有川ァ!!」

「すいません。早く同好会を作りたいんです!! いませんかー!!」

 先生の叱責を無視して叫ぶが、職員室の先生はポカンとしているだけでまともな反応は返してこない。

 なんだ、こいつら、どいつもこいつも全員コミュ障か?

 うんともすんとも言わない。

 こんな奴等が教育者なんて馬鹿みたいだ。

「大変ですね、先生も」

 とか、そんな担任に対する同情しか言ってこない。

 だめだな、こいつら。

 少なくともここにいる連中は同好会の顧問をするつもりはなさそうだ。

 ならここにいる意味はない。

「失礼しまーす」

「明日説教するから――」

 担任が何か言っていたが扉を閉めてシャットダウンする。

 担任がこっちに向かってきてたから走るとしよう。

 まさか普段から廊下を走るなと言っていた張本人がまさか走って追いかけるなんてことはしてこないよな。

「よし、逃げるぞ」

「な、何いきなり言い出したんですかー!!」

「まっ、これが一番効率いいんだよ」

 先生を頼ろうとしたのが間違っていた。

 俺から一人一人先生に話しかけるしかないのかな。

 面倒だ。


 それから片っ端に先生に声をかけたが、色よい返事は貰えなかった。

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ぼっちで充実しているのに邪魔してくる 魔桜 @maou

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