第45話 一つ屋根の下で過ごすのは同じ学校の生徒会長(4)
生徒会が俺達をここから追い出そうとしている。
そうなると俺達の集まる場所がなくなってしまう。
放課後だけじゃなく、昼休みにも集まることができなくなるだろう。
ここよりも集まりやすい場所はない。
廊下で集まったりなんかしたら、川畑とは集まりづらくなる。
これは、どうするか。
どうやって生徒会長の主張を覆すかだが……。
「その苦情を入れたのは誰なんですか?」
こうして生徒会長達が乗り込んできたってことは、詰みの状態だろう。俺は姉の性格を深く知っている訳ではないが、生徒会長としての有能さは知っている。この人は詰めが甘いようなタイプではない。俺達がどこかに抗議を入れても、すぐさま覆すだけの裏工作ぐらいやっていても驚きはない。
こうなった以上、その苦情を入れた相手を懐柔する方が手っ取り早い。勝てないような相手ならば、まず戦わないことが肝要だ。
誰が苦情を入れたかは知らないが、生徒会長よりも御しづらいとは考えられない。幸い俺は金も持っているし、川畑明日菜という非常に強力なカードを持っている。カリスマ性のある彼女の切り方さえ分かっていれば、ほとんどの相手は切り崩すことができるだろう。それに、俺がいる。専門外のことならともかく、理屈をこねくりまわす舌戦となれば、この俺が負ける道理なんてない。
「守秘義務に反するので誰かは言えません」
「チッ――」
口走ってくれれば何もかもうまくいったけど、流石にそう簡単にボロは出さないか。生徒会長が鉄壁なら他の生徒会メンバーが口を割ることに期待したいが接点がないからな。警戒心を出して俺とまともに話してくれるかは怪しい所だ。
「先生に相談してみればいんじゃないんですか?」
「相談しても意味ないんだよ」
「何でですか? やってみなきゃ分からないですよ!」
頭の足りない井坂が精一杯考えてみてくれたらしいが、そんなの答えるまでもなく却下だ。
「……先生はむしろ私達を規制する側でしょ」
「そっか……そう、ですね……」
川畑の言う通り、先生に相談してもお前らが悪いと言う側だ。家庭科室を占拠しているという話、どこまでの人間に届いているのかは知らないが、教師まで行っているのは考えづらい。
生徒会が巨大な権力を持って生徒たちを支配しているという設定があるならまだしも、うちの生徒会が持っている権力は常識の範囲内だ。
部活の予算の話し合いみたいに権力を振りかざすような場面は確かにあるが、教師の監視の元話が進んでいく。一つの部活動を贔屓して予算を集中させることなんてできないし、その予算案も教師が作っている。だから生徒会ができることは少ない。
もしも教師がこの話を知っていたなら生徒会に任せるんじゃなくて、自分達で問題を指摘するのが普通だ。そこまで生徒の自主性を重んじるのなら、そもそも教師の存在意義を疑うレベルだ。
教師に助けを求めるのはむしろ自分達の首を絞める行為だ。
そのぐらい、ちょっと頭を働かせればすぐ分かる事だろ。
「意外ですね……」
「は、何が?」
「あなたがここまでここに固執するなんて」
「――――ッ」
生徒会長の言葉が突き刺さる。
そうだ。
俺はどうしてここまで必死になって頭をフル回転させているんだ。
「あなただったら、別に構わないと言うと思いましたけど」
生徒会長の言う通りだ。
少し前の俺だったらこの場所がどうなるが知った事ではなかった。
面倒だが、また一人になれる場所を探したはずなのだ。
だけど、いつの間にか俺はこの場所を守ろうとしていた。
井坂や川畑達と共に入れるこの家庭科室がいつの間にか普通になっていたのだ。
グルングルンと頭の中が回転する。
混乱している。
自分でもなんでここまでしてここを死守しようとしているのか分からない。
俺がこの二人を大切に思っているなんて、そんなことあるはずがない。
「あ、あの……」
井坂が俺と生徒会長の顔を交互に見ると、おずおずと質問する。
「もしかして二人って知り合いですか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます