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第39話 現役女子高生YouTuber川畑明日菜には友達がいない(15)
あれから数週間経った。
俺が逆転の一手を打ったことによって、状況は一変した。
川畑の友達0人にする作戦を講じた所、結果的には全く上手くいかなかった。
「あいつ、囲まれてるな……」
色々と教室にいるだけでも情報は入って来る。ゴシップ大好き女子達の無駄にデカい噂話のおかげで、川畑が今どういう状況なのかはある程度把握できていた。女子達が川畑をどう見ているのかも。
あまりにも気になって、こうして一年のところまで様子を見に来た。
騒動の前は川畑の周りには男しかいなかった。
だが、今は川畑の周りは女子しかいない。
逃げられないように周囲に何十人もいる。
男よりも遠慮ない。
男は触っただけで痴漢扱いされるから、距離を詰められない。だけど、女は女を触っても何の問題もない。だからいくらでも距離を詰めることができる。
「迷惑そうにしているな」
救うつもりで、俺はあいつに提案をした。
あの時取り巻いている問題から解放されるように、自分なりに知恵を絞ってあいつを助けるつもりだった。だけど、事態は悪化したのかもしれない。あんなに女子に囲まれるなんて前はなかった。
動画の件でまたなんやかんやと難癖をつけられたのかも知れない。
あの後、何個か新たに動画を上げた。
そのせいで、反感を買ったんだろうか。
「迷惑そうっていうか、困惑しているんじゃないですか?」
隣にいた井坂がそう評するが、そうなんだろうか。
「困惑?」
「だって、川畑さん嬉しそうですよ。有川さんと一緒に動画を上げてから、女子の人気凄いらしいですよ」
「え? そうなんだ……」
あれって、嫌がらせのために囲まれていたんじゃないのか。
群がっている女子の中でペンとか持っている人がいるけど、あれってサインをねだられているのか。
あれだけ女子に敬遠されていたのに、分からないもんだな。
やっぱり、どいつもこいつも手のひら返しが早い。
ちょっと動画を上げただけなのに、意見を簡単に翻す面の厚い連中だ。
「人気無くすのを覚悟で動画を出したんだけどな」
「男子の人気はなくなったみたいですけどね。でも、あの動画の内容だったら、女子の人気は出るんじゃないですか?」
確かに、男子の対応は変わっていないようだった。
だが、まあ露骨に陰口を叩くようなことはしないようだ。
男と言うのは体面を気にする生き物だ。
周りが認めているのなら、そこで無駄に反骨精神を出して、川畑を糾弾するようなことはしないだろう。
何か人間関係で問題が起きた時に、男と女どっちが面倒かと聞かれたら、俺は女と答えるだろう。
女は凄い。
周りに人がいるのに平気で一人を孤立させることができる。
周りに、仮に先生がいようが、いじめが良くないと思っている男子がいようが関係ない。どんなことをしても許される。女子は陰湿な悪口を言っても、世間的には許されてしまうのだ。男だったらそうはいかない。男がそんなことをしたら、集団で仲間を作る女子達がねー、何してんの、さいてー、とか一言いえば、いじめっ子男子は怖くなって逃げてしまう。
学校の先生だって男に注意はできても、女子には注意できない。何故なら複数人で仕返しされるからだ。
ということで、男を敵に回るよりかは、女を敵に回す方がよっぽど厄介だ。
だから、今の状況は良くなっていると思う。
女子に好かれれば、安泰だろう。
俺は女子にも嫌われるだろうと思って、開き直った動画を上げさせたのだが、やっぱり女の感性というものは分からないもんだ。
「今、あの動画に映っていた男が誰かで話題になっているみたいですね」
「まあ、みんな、この学校の奴らは大体気が付いているだろ」
俺が取った行動それは炎上に炎上を重ねることだ。
ヤバイ行動にヤバイ行動を取ったら、前のヤバイ行動が上書きされるはずだ。
そう思って、俺は新しい動画を上げさせた。
その動画には俺も出演している。
勿論、顔は映していない。
鏡やらが反射して顔が映っても大丈夫なように、サングラスとマスクをつけているが、動画からは見切れている。
「まあ、大丈夫じゃないかな。今の時代、小学生ですら配信者で顔出ししているし」
赤ちゃんですら、動画で紹介する時代だ。
顔出しするのなんて当たり前になっている。
まあ、怖いから顔出しはしていない。
声も出していない。
ただまあ、気が付くやつは気が付いちゃうだろうな。
「それに、あの内容、あれって本当に嘘なんですよね? かなり本当っぽいですけど」
「どこがだよ!! めちゃくちゃ演技しているだろ!! ちゃんと台本だってあるんだぞ!!」
「……怪しい」
「怪しくないから!!」
別に井坂にこれだけ責められるようなことは、何一つしていない。
一緒に動画を撮って、それを上げただけだ。
脚本も一緒に考えて、それをサブチャンネルに上げた。
それが人気が出て、登録者数がとんでもない勢いで増えまくっている。
反響は必ずあるとは思っていたが、予想外だった。
女子があんなしょうもない動画に好反応を示すとは思わなかった。
「ただ、一般人の俺と、人気配信者の川畑が付き合うことになっただけだろ」
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