第7話 転校生の井坂幸は何も知らない(7)

 男は辛い。

 それだけは言っておかなきゃな。

 転校生もそういうところは敏感かもしれない。

 女だって辛いんですよ。

 どころか。

 男は辛くない。

 女がこの世全ての不幸を背負っています。

 みたいな言い方をされたらたまらないからな。

 まあ、女子だって大変だってことは知っている。

 何故なら、

「男子に自発的に話しかけていいのは、クラスでそれなりの地位にいる奴だけだ」

 女子は何かと目に見えない順位を大切にするからな。

 それぞれグループを作って、そこから出ようした瞬間。

 容赦がなくなる。

 そういう性質を持っている。

「たかが男子一人。たかが一声。そんな軽い気持ちで話しかけるなよ。自発的に話しかけてくれるっていうだけでその女子は、男子の中での評価はうなぎ登りだ」

「そ、そんなものですか?」

「ああ。下手したら男子のほとんどに好意をもたれて、色んな奴らから声をかけられることになる。そうすれば、他の女子ほとんど全員から顰蹙を買うことになるだろうな」

 男っていうのは単純だ。

 女子は自分からグイグイ男子には関われない。

 そうしたら、ハブられるからな。

 女子は女子から嫌われたら終わる。

 男子に嫌われて何かあっても大丈夫。

 そんな時は女子を集めて、その男子の精神破壊をすればいいだけのお話。

 団結力が強いからこそ、女子同士の関係性っていうのは重要。

 だが、もしも逸脱したら?

 もう、そしたら逆ハーレム状態だよ。

 そんな積極的に絡んでくる女子なんていなから、免疫のない男子なんてホイホイ釣られる。

 女子の、彼氏できないんだよねー、というあるあるワードを聴くと怒髪天だ。

 彼氏ができないんじゃない。

 彼氏を作ろうしないだけ。

 ただ自分の理想が高いだけだ。

 一声かけるだけで、男子は落ちるからな。

 それをしない時点で、ただの臆病者だ。

 男子の、彼女ができないんだよねー、という一言とは天と地ほども差がある。

 一度男子に生まれ変わって絶望を味わってほしい。

 ほんとに。

 何をやっても。

 彼女ができないという地獄をその身に刻んで欲しい。

「男からしたら貴重なんだよ。積極的に話しかけてくれる女子っていうのは。ああいうギャルっぽい連中から話しかけられても陰キャは嬉しくない。だけど、お前みたいな地味キャラが話しかけてみろ。陽キャと陰キャからモテることになる。そしたら間接的に他の女子にマウントを取ることに繋がるんだよ」

「あの、私のこと凄く器用に貶してます?」

「……ソンナコトナイヨ」

 男子にとっての女子の理想像。

 女子にとっての女子の理想像。

 それは、あまりにもかけ離れている。

 女子にとっての女子の理想像の多くは、カッコいい女性。

 男性に負けない。

 自分の意見をハキハキと言える女性。

 自身に満ち溢れ、リーダーシップがとれるパーフェクトな存在。

 女性らしい女性というよりかは、姉御肌。

 男子っぽい女性みたいな存在。

 そういう女性が女性にモテる。

 ただし、中学、高校でそういうタイプは珍しい。

 社会人として実際に実績を積んだ人間じゃないと、姉御肌を出すのは難しい。

 学生時代にリーダーとして選抜されるのはギャルっぽい女子だ。

 そういうタイプが、スクールカースト上位に喰い込むことが多い。

 ギャルなら空気読まずに何でも言えるからな。

 だけど、陰キャ男子からしたら近寄りがたい存在だ。

 ずけずけとした物言いをされると、単純に――傷つく。

 男子にとっての女子の理想像。

 それたくさんある。

 少なくともカッコいい女性と答える男子は少数派だろう。

 だとしたら、絶世の美女?

 いや、それはそれで近寄りがたい。

 だとしたらどんな女性なのか。

 男子にとっての女子の理想像の多くは、儚い女性。

 自分の意見は言うよりかは、こちらの意見を聴いてくれる。

 リーダーシップを取る人間に、黙って相槌を打てる人間。

 そういう女性が一番モテる。

 カッコいいとは正反対。

 聞き上手というやつだろうか。

 すごーい。

 初めて聞いたー。

 とか、しょうもない男子の豆知識みたいな奴を聴いているだけでいい。

 他にも。

 ぶりっ子。

 不思議天然系。

 アイドル。

 そういったタイプは断トツでモテるが、そういう人は大体他の女子に全力で潰されるからな。

 最近は目にしないな。

 例え全女子を敵に回して生き残れたとしても、女子が絶対男子に『ねえ、あの人わざとらしくない? ぶりっ子だよねー』と、執拗なまでに印象操作をしてくるからな。

 別にそう思っていなくても、男子は女性全員を敵に回したくないからその場では頷くしかない。

 女子の結束力はえげつないからな。

 その中でもぶりっ子弾圧は一番かもしれない。

 その時ばかりは、普段はマリアナ海溝よりも溝のある女子グループ全てが手を取る。

 圧力をかけまくって、ボッチにして、そして教室の隅に追いやる。

 誰もがやり過ぎだと思っていても口に出せない。

 一言でも口にしたら、そいつが次の標的になるから。

 そんなことをされても、たまに男子に愛想を振りまくぶりっ子いるから凄いよな。

 ハート強すぎんだろ。

 女子派閥の争いすら気づけない鈍感な男子連中は、一切助けてくれないのに、その男子連中の中でずっと笑っているぶりっ子女子を見たことあるけど、尊敬の念すら抱いたよね。

 たまげたなあ。

「それじゃあ、私のことどう思います?」

「夏の夜に電気消したら耳元に寄って来る蠅」

「やっぱり貶している!! そして私滅茶苦茶、好感度低くないですか!? せめて人間ぐらいの評価はもらっていると思っていましたけど!?」

 なんだ。

 ちゃんと自己評価はできるタイプなのか。

 だったらなおさら、なんで俺にこんなにかかわって来るのかわからないんですけれども。

「で、でも、どう話しかければいいんですかね?」

「え?」

「話題なんてないですよ。共通の話題がないと何も話せないですよね」

「うん。それが転校生の欠点だな。だけど、その欠点を上手く生かせば転校生であることを逆手に取ることができる」

 具体的な案をそろそろ授けることにしよう。

 ある程度を教えて、そして今度は実践だ。

「話しかけるなんてなあ。転校生のとある特権を使えば楽勝なんだよ」

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