迷いこんだカタリ

けんはる

迷子のカタリ

「ここはどこだ?」

森の中でカタリは地図を拡げていた

「たしか、さっきまで町の中にいたんだけどな?」

カタリは辺りを見回していると

1人の少女が目に入った

「あの子に聞いてみよ♪すみませ~ん」

カタリは地図を鞄に入れ、少女の元へ走った

「どうかしましたか?」

「あのここはどこですか?」

「ここは童話の登場人物達が住んでいる世界よ」

「童話の世界?じゃあ、君は?」

「私は赤ずきんよ、よろしくね」

「やっぱり赤ずきんちゃんだ、ボクはカタリィ・ノヴェル、カタリって呼んでね」

「わかりました、カタリ」

「うん、赤ずきんちゃんは森の中でなにをしてるの?」

「お婆ちゃんの家に行く途中なんだけど、追いかけっこしてるの」

「追いかけっこ?」

赤ずきんはニッコリと笑い

「そう、追いかけっこ♪」

赤ずきんはカタリの背後に目をやり

「見つけた♪狼さん、それじゃあ、失礼するわね、カタリ」

赤ずきんは猛ダッシュでカタリの横を駆け抜けた

「うん、またねってもう行っちゃった、さてと、童話の世界じゃ持ってる地図も役にたたないからどうしよう?」

カタリが悩んでいると

懐中時計を持った白兎が目の前を走り去った

「今のって、時計うさぎ?とりあえず、追いかけよ」

カタリは時計うさぎの後を追いかけるが見失ってしまった

「どこに行ったんだろ?見失っちゃった」

カタリが立ち止まっていると何処からか歌が聞こえてきた

「綺麗な歌声、誰が歌ってるんだろう?」

カタリは歌声が聞こえる方へ歩き出した

「あれは?」

1人の女性が歌いながら洗濯物を干していた

カタリが近付くと女性は気づき

「あなたはどなたですか?」

「ボクはカタリィ・ノヴェル、カタリって呼んでください」

「わかりました、カタリ、私は白雪姫です」

白雪姫は微笑みを浮かべた

「やっぱり、白雪姫」

「カタリはどうしてここに?」

「実は童話の世界に迷いこんで、どうしたら良いかな?と思っていたら目の前を時計うさぎが横切ったので追いかけたけど見失っちゃって、そのときに白雪姫の歌声が聞こえてきたから来てみたんだ」

「そうなんですか」

「そうなんだ、白雪姫はどうして洗濯物なんて干してるの?確か王子様と幸せになったんじゃ?」

「えぇ、そうですけど、時々お世話になった七人の小人の家に遊びに来て、掃除とかをしてるの」

「そうなんだ」

「えぇ、カタリはこれからどうするのですか?」

「そうだな、とりあえず時計うさぎに会いたいかな、どこにいるか知らない?」

「時計うさぎさんですか、それなら」

白雪姫がメロディを口ずさむと一羽の青い鳥が飛んできて

白雪姫の肩に止まった

「この子が案内してくれます」

「その鳥はもしかして」

「はい、幸せの青い鳥です」

「本物だ」

カタリが見ていると青い鳥はどや顔をしていた

「それでは青い鳥さん、カタリを時計うさぎさんの元へ案内してください」

青い鳥は頷くと飛び立った

「色々ありがとう、白雪姫」

「いえ、いいんですよ、早く行かないと見失いますよ」

青い鳥はだいぶ離れていた

「本当だ、待ってよ、青い鳥~」

カタリは走って

青い鳥を追いかけた


カタリが青い鳥を追っていると

青い鳥は一本の木に止まった

「どうしたの?青い鳥」

カタリが話しかけると青い鳥はある方向を嘴で指していた

カタリは指された方向へ向かうと

お茶会がされていて、時計うさぎが座っていた

「あっ時計うさぎ」

時計うさぎはカタリの方に顔を向け

「いかにも私が時計うさぎだが君は誰だ?」

「あっボクはカタリィ・ノヴェル、カタリって呼んでください」

「わかった、カタリ、そんなところに立っていないで座ったらどうだ?」

「良いの?」

「あぁ、良いとも、なぁ皆」

他の参加者に同意を求めた

「良いわよ、私はアリスよ」

「大丈夫ですよ、私はシンデレラです」

「いいよ、いいよ、僕はピノキオだよ」

「ありがとう、アリス、シンデレラ、ピノキオ」

カタリはピノキオの隣に座った

時計うさぎはティーカップを上に上げ

「それではカタリの参加を祝してかんぱーい」

「「「「かんぱーい」」」」

皆はそれぞれ話し始めた

「そういえば、カタリはどうして、このお茶会にきたの?」

カタリはピノキオに今までの経緯を話した

「そうなんだ、じゃあ帰り方がわからないんだ?」

「そうなんだよ、どうしたらいいか、わからないんだ」

「だったら、フェアリーゴッドマザーに相談したら?」

「フェアリーゴッドマザーってシンデレラに出てくる?」

「そうだよ、ねぇシンデレラ」

「なんですか?ピノキオ」

「実はね」

ピノキオはシンデレラにカタリから聞いた話を話した

「っていうことなんだ、フェアリーゴッドマザーなら何とかできるかなって思って」

「そうなんですか、多分できると思います」

「本当!!」

カタリはシンデレラに詰めよった

「はい、それじゃあ、ちょっと待ってくださいね」

シンデレラは苦笑いをしながら

ガラスの靴の踵をコツンと合わせると

カボチャの馬車と白馬が現れた

「本物のカボチャの馬車だ、すごい」

カタリは驚きながらカボチャの馬車に近付いた

「そうですか?それでは乗ってください、フェアリーゴッドマザーの元へ行きますので」

「わかりました、ありがとう」

「いえ、当然のことをしただけです」

カタリが馬車に乗り込み

扉を閉めると馬車は走り出した

しばらくすると馬車が止まり

「着いたのかな?」

カタリが馬車から降りると馬車は来た道を戻って行った

「ありがとう、届けてくれて」

馬はヒヒーンと鳴くとそのまま去っていった

「でも、本当にここに居るの?」

カタリは辺りを見回すと木だけしかなかった

「とりあえず、呼んでみよ、フェアリーゴッドマザー」

カタリは大声で呼ぶと

「なんですか?」

「えっ」

背後から声がしたので振り返ると優しそうなお婆ちゃんが立っていた

「あなたがフェアリーゴッドマザーさんですか?」

「そうですよ、あなたは?」

「あっボクはカタリィ・ノヴェル、カタリって呼んでください、さっきまで居ませんでしたよね?フェアリーゴッドマザーさん」

「魔法で見えないようにしていたのですよ、それと私のことはマザーで良いですよ」

マザーは優しい笑みを浮かべた

「わかりました、マザー」

「それでカタリ、何か私に用があったのでは?」

「あぁそうだった、実は…」

カタリは今までの経緯をマザーに話した

「ということでマザーに会いにきました」

「なるほど、わかりました」

「じゃあ、戻れますか?」

「そうですねぇ」

マザーはカタリの全身をジーと見ながら

「カタリ、鞄に付けているそれはなんですか?」

カタリはマザーを指した先を見ると

「あぁこれはトリのキーホルダーだよ、これがどうしたの?」

「トリから特殊な魔力を感じるので、これなら戻れるかもしれません」

「本当に!!」

「はい、トリを貸してもらえますか?」

「はい♪」

カタリは鞄からトリを手渡した

マザーは受け取ると杖を取り出し

呪文を唱えるとトリは手から飛び出した

「あとはトリの後を付いていけば戻れますよ」

「わかりました、ありがとうございました」

カタリは勢いよく頭を下げた

「さぁ行きなさい、カタリ」

「はい!!」

カタリはトリの後を走り出した

いつの間にか町へと戻ってきていた

「戻ってこれた♪そういやトリは?」

辺りを見回すがトリはいなかった

ふと鞄を見てみるとトリはもとの位置に戻っていた

「いつの間に?まぁ良いか♪旅を続けよう♪」

今日もカタリは地図を片手に旅を続ける

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迷いこんだカタリ けんはる @kenharu

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