第8話 武具屋に行こうと思ったのにカフェで。
街に帰ると、女性の頭上に「!」が出ていた。
「あ、冒険家さん! 息子を助けていただき本当にありがとうございました!」
それだけ言うと、お礼として五千ゴルドくれた。
そしてアカリは、迷うことなく足を動かし出す。
目指すはメインストリートの一角にある、ショーウィンドウの店だ。
「よーし、買い物するぞー!」
そして、ドアを開けて入る。
……はずだったのだが、ドアは開かない
【error:エラーコード001】
「えー! なんで、なんで開かないないのぉぉぉぉ!」
ガタガタと何度も何度もドアを引っ張るがドアは開かない。
【メンテナンス中】
「へ……」
この日は月に一度のメンテナンスの日だった。
メンテナンスならば仕方ないと、アカリはゲームの電源を切り、隣の部屋へ行く。
「あれ、珍しい。朝から晩までゲーム尽くしのダメ
お姉ちゃんがゲーム部屋から出てきた」
「ゲームはメンテナンス中なんだよぉ」
栞莉は勉強をしていたが、朱莉が出てきたので手を止めた。
「ねー栞莉ぃ、カラオケ行かなーい? 駅前に新しいカフェできたんでしょ? 行こ行こー! ねえねえ栞莉ぃー」
「嫌だよ、受験まであと少しなんだよ?」
「大丈夫だよ、私も入れたんだから!」
胸を張る朱莉に、栞莉は呆れて再び手を動かし出した。
「ちぇっ、栞莉のケチ」
仕方なく朱莉は最新型のスマートフォンをいじり始める。
そして、あることを思いついた。
「そうだ! 麻耶華ちゃんと遊びに行こう!」
そして、朱莉は麻耶華に電話をして、午後から約束を取り付けた。
「よ、朱莉! 誘ってくれるの久々じゃない?」
「うん! 最近はゲームにハマっちゃって……はは」
手を振るポニーテールの女の子――摩耶華に、朱莉はそう言った。
「え、もしかしてアグベ買ったの?」
眉を
「あれ、言ってなかったっけ?」
朱莉は、学校での会話を思い浮かべる。
(そういえば、学校でも皆んなとゲームの話はしてないな)
「詳しく聞かせてもらおうか」
「ちょ、麻耶華ちゃん……お顔が険しいですよ?」
麻耶華にグッと腕を鷲掴みにされて、朱莉は連れ去られてしまった。
近所の
「で、朱莉は職業は何にしたのかな?」
「黒魔導師だよ!」
朱莉がそう答えると、キョトンとする麻耶華。
「もう一回聞いていい?」
「黒魔導師だよ!」
つぎには、麻耶華は頭を抱え込んで呻いた。
「ゲームの情報に関しては公開されてない情報も結構集めたはずなのに……」
上位職の情報もそれなりに集めていた麻耶華は、悔しがるようにして朱莉を見つめる。
「どうやってそんな職業になったの?」
「え、えーと……死んだらなれた……かな?」
どうしてと聞かれても条件が書かれていなかったため、なんとも言えない。
はあ、とため息を吐いた麻耶華は話を変える。
「今、ストーリーはどこまで進んだの? 上位職なんだし、そろそろ赤の間とか?」
「ストーリーは、まだ1ー5をクリアした所だよ」
朱莉は先ほど1ー5を終えて、武具屋に入ろうとしたところでメンテナンスになったと告げる。
ついでに一ヶ月間の行動を聞かせると、麻耶華は納得したように、「そっか」と言って苦笑した。
「朱莉、あんたスレで色々話題になってたの見たよ」
「す、すれ?」
「スレッドのこと! 掲示板って言えば分かりやすいかな?」
麻耶華は情報を集めるため、定期的に匿名掲示板を覗いていた。
そんな時に、テキストというランク一位の男が立てたスレッドに目を引かれたのだ。
「あんた、そこら中で【殴打姫】って話題になってたんだよ?」
「ええー! なにそれ!」
「真珠の海で【蠍】っていうプレイヤーキラーを殴打で倒したから殴打姫」
麻耶華は、アカリの反応を面白がるように言った。
「あー、そんなこともあったねー」
すると、昨日のことなのにアカリは、覚えてなかったかのように言い放つ。
「そんなこともあったねーって……」
麻耶華は呆れ返って言葉に詰まってしまう。
一方朱莉は、姫ということは悪口では無いのだろうと思い、多少恥ずかしくなった。
そんなことより。と、麻耶華は話題を切り替える。
「朱莉はイベントとか出ないの?」
「イベントなんて無理だよー。まだ初期装備なんだよー?
武具屋で強い装備を買ったとしても、付け焼刃だろうし……」
その朱莉の反論を聞いて、麻耶華は「うーん」と唸る。
「じゃあさ、一緒にパーティ組んでストーリー進めない?
明日は先生の会議とかあって早帰りだし、鍛冶屋まで進めるの手伝ってあげるよ」
「え、鍛冶屋?」
「そうそう、大体は鍛冶屋で作ってもらった方が強い装備ができるの。
まあモンスターのドロップアイテムがいるけどね」
「ふーん、そっかー。じゃあ頼んでもいい?」
ということで、朱莉と麻耶華は共にプレイをする約束をしてメンテナンスが終わるまで、遊んだのだった。
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