第6話 知らぬ間に噂は広がって。
「あ、いたいた! パール取ってきましたー!」
アカリは探し求めたパールを手に入れると、即座に街へと帰り、女性に話しかけた。
「あら、冒険家さん! ありがとうございます、これで息子を安心して冒険家にさせられます!」
そしてアカリは、女性からお礼として千ゴルドもらった。
ちなみにゴルドというのは、ゲーム内で取引に使われる通貨だ。
終わったと思い、立ち去る前に次の目的を探すため、地図を広げる。
すると、同じところが光っていた。
不思議に思い顔を上げると、話終わった女の人の頭上に再び「!」が出ている。
「すみません、冒険家さん。息子が頭を怪我したようなんです。
回復薬ですぐに治ったのですが、再発防止のために頭装備を作ってあげたいのです。
そこで「fedff2」の薄桜の下でカエルの皮を取ってきてほしいんです!」
【ストーリー:1ー2】
話が終わるとアカリは、すぐさまワープオブジェクトまで移動してから、手をかざして転移を開始した。
「fedff2」――薄桜の下――
そこは、桜並木で通路が作られたフィールドだった。
プレイヤー達はアカリに目もくれないため、堂々と歩いている。
そこにいたモンスターは【フタバジャクシ】という、緑色のオタマジャクシだった。
「うええ、ちょっと気持ち悪いかも」
そう言って、モンスターに気づかれる前に逃げ出した。
この辺のモンスターならばアカリのスピードについて来れないため、一気に奥地まで駆け抜けることが出来る。
薄桜の下の奥地には、桜色のカエルがいた。
【チェリー・フロッグ】というモンスターだ。
誰しもここで一度はつまずくらしい。
その不規則な動きは読みづらく、緩急がすごいのだという。
また、繰り出してくるスキルもプレイヤーを苦しめる一因であり、まずは回避など自身のプレイヤースキルを磨くのだという。
しかし【ドラゴニュート】と比べると動きは遅く、パターンも単調だと言えるため、アカリにしてみれば全くもって苦にならなかった。
火魔法を躱して、一気に詰め寄り一発叩く。
すると、【殴打好き】と【クリティカル・ヒッター】のおかげで、一気に体力ゲージがなくなった。
「ふふふ! 桜蛙の皮ゲット!」
【スキルを獲得しました】
【火の粉】
効果:相手に火属性の【小】ダメージを与える。
MP:2
取得条件:チェリー・フロッグの討伐。
無事に勝利して、新たなスキルを手に入れたアカリは嬉々として街へ帰った。
「桜蛙の皮取ってきましたよー!」
というと、再び女性からはお礼として千ゴルドもらえた。
そして地図を見るまでもなく、「!」が頭上に出た女性に話しかけ直す。
すると、「息子が胸を怪我したため、鎧を作りたい」ということだった。
【ストーリー:1ー3】
すぐさまアカリはワープオブジェクトに行くと「def3de」へとワープした。
「def3de」――白百合の花畑――
例に倣ってアカリは奥地まで駆け抜ける。すると、そこにいたのは巨大蜂だった。
アカリは子どもの頃、ミツ蜂に右手の甲を刺されて痛い思いをしたことがあるため、蜂は苦手だった。
なので、遠慮することなく魔法スキルを撃ち放つ。
「【火の粉】!」
右手の平から出た黒い火で、巨大蜂のHPは一気に削れきってしまった。
もともとINTが高い上に、属性効果でダメージが50%増加する。また【黒魔導師】のジョブ補正が加わることで、最弱魔法でもかなりの威力を発揮した。
蜂は抵抗をできず、あえなく光になって消えていく。
【スキルを獲得しました】
【双葉の針】
効果:相手に木属性の【小】ダメージを与える。
MP:2
取得条件:ジャイアント・ビーの討伐。
アカリはスキル獲得後、アイテムが手に入ったか確認し、街へと帰った。
「白百合色の甲殻」を渡すと、次は「息子の帰還が早くなるように良い靴を作りたい」ということだった。
【ストーリー:1ー4】
「c1e4e9」 ――
ワープをすると、そこにいたのはアライグマのモンスターだった。
「うわーかわいいー!」
もふもふのそれを見て、触ろうと手を伸ばす。
しかし、「シャー!」と鋭く尖った爪で切りかかろうとしてきたため、仕方なく逃げた。
「うう……可愛かったけどなぁー」
そんな事をぶつぶつ言いながら奥地まで駆け抜けるアカリ。
奥地に居たのは巨大なアライグマだった。
【
少し洒落の効いた名前のモンスターに、クスッと笑いつつ、それでも気を引き締める。
道中のモンスターは見逃すことができるが、ボスモンスターは倒さなければならない。
「【双葉の針】」
アカリがスキルを使うと地面から黒い双葉が出て、その二つが捻れ巻きつき、一つの針になる。
そして飛んだ双葉の針は見事に命中して、シアライグマは光になる。
【スキルを獲得しました】
【水たまり】
効果:相手に水属性の【小】ダメージを与える。
MP:2
取得条件:シアライグマの討伐。
「ごめんね、アライグマさん」
それだけ言い残し、アカリは街へと帰っていく。
「あら、冒険家さん。本当に助かります!
これであの子も一人前の冒険家に近づけるかしら?」
女性にアイテムを渡すと、そう言ってお礼として千ゴルドくれた。
話終わると、すぐに女性の頭上に「!」が出る。しかし、今回のは大きさが違う。何かを急かすように、大きな赤いびっくりマーク……。
そして、アカリはもう一度話しかける。
「どうしたんですか?」
「あ、冒険家さん! 大変なんです! 私がついついお節介を焼きすぎたばかりに、息子が家を飛び出して行ってしまいました!
モンスターのいるフィールドに一人で行っているかもしれません!
もしかしたら……武具屋の店主さんと仲が良かったから店主さんなら何か分かるかもしれません!」
【ストーリー:1ー5】
アカリはストーリーに進展があったことに対して、ワクワクしていた。
すぐさまワープオブジェクトまで移動しようと思ったが、メニューの右上にある時計を見て、「うーん」と悩んだ後に思いとどまった。
「もうご飯の時間だ……勉強もしなくちゃいけないし、明日にしよっか!」
すると、アカリはメニューからログアウトして、ゲームの電源を切った。
その日の夜のこと。
43:名無し@拳
話題になってる魔導師ってもしかしてあの子?
44:名無し@傘
ああ、あの殴打の子?
すでに周りで「殴打姫」って呼ばれてるらしいぜww
45:名無し@惣菜
殴打姫w
魔導師なのにスキル1つもないとか草生える
46:名無し@菩薩
>>45
スキルは持ってるらしいよ
始めたばっかなんだけど「fffff1」の真珠の海で直接見てた時、「みんなを巻き込むから使えない」って感じのこと言ってたし
47:名無し@しめじ
>>45
上見ろ、上
もしも同じ子ならとんでもないスキル持ちだぞ
みんなを巻き込むのも頷ける
48:テキスト
すまん遅れた
さっき仲間の奴に聞いてみたけど、やられたのは「
49:名無し@しめじ
これまた有名なPKだな
初心者狩りの代表格だし、それに勝つとかなかなか
50:名無し@傘
>>49
何がヤバいって殴打で勝ったってとこ
魔導師はスキルを使ってなんぼなのに、それを封じられても強いとかおかしい
51:名無し@惣菜
ナイトがおったんやろ?
そのナイトが強かったんちゃうん?
52:名無し@菩薩
>>51
いや、ナイトは途中参戦でそれまでは1対3で闘ってた
あと、ナイトも魔導師もストームケージ?っていう魔法を耐えてた
53:テキスト
その情報は知らなかったな
初期装備でストームケージに耐える魔導師……どこに出しても恥ずかしくないな
54:名無し@拳
本当にチートだったりしてな
その意見を誰も否定できなかった。
それほど、アカリの性能はぶっ壊れと言えるのだろう。
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