第3話 蹂躙してたら罠にかかって。

 アカリがスキルを確認した後、一度休憩を入れ昼食を摂っている。


 一方その頃、インターネットに、あるスレッドが立てられていた。




1:テキスト

やばいヤツを黒の神殿でみつけた。


2:名無し@拳

>>1

さすがランカー1位やな。匿名掲示板で名前晒すとか。

しかも黒の神殿とか早過ぎん?まだ発売して一ヶ月ちょいやぞ?ww

ワイはまだ「6e8252」の草柳くさやなぎの森なんだが


3:名無し@傘

>>1

やばいヤツってなん?

俺からしたらあんたが相当やばいんだが

ちなみに俺は「2a83a2」の花浅葱はなあさぎの花弁でレベリング中


4:テキスト

匿名掲示板なのに名前を付けてるのは信憑性を上げるため

黒の神殿は試しに行っただけだけど、あそこの敵強すぎて勝てる気しない

そんで帰ろうと思ったら初期装備の身長150センチないくらいのショートヘア美少女魔導師がいた


5:名無し@しめじ

初期装備のバカ美少女が黒の神殿に居たって話?


6:テキスト

>>5

そんなところ

その初期装備の美少女魔導師が杖で殴ってダークリザードマンのHPを9割削ってた


7:名無し@拳

は?


8:名無し@傘

ま?


9:名無し@しめじ

な?

魔導師なのに杖で殴打ってww


10:テキスト

それだけじゃあ話は終わらんぞ

結局その子は負けた。二体同時には相手にできなかったからな

けど、そのあとを追って街に帰ったら、やったーってガッツポーズしながらもう一回ワープしたんだ

で、もう一回黒の神殿に行ったら・・・


11:名無し@拳

おい、早く言わんかい


12:名無し@しめじ

焦らすねえー


13:名無し@傘

まだか?


14:テキスト

・・・見たことのないスキルでダークリザードマンを殲滅する美少女魔導師の姿があった


15:名無し@拳

あ?なんなんそれ?

ダークリザードマンの殲滅とかww


16:名無し@しめじ

ランカー1位は目が狂っているのか?


17:名無し@傘

たしかに、テキストが名前を明かしてなかったら絶対に信じなかったな

ま、今も信じてないけど


18:テキスト

あんなに強けりゃすぐにイベント上位に浮上するだろうし、今は観察をしようと思ってる

ま、あの子が行く場所とか黒の神殿しか思い浮かばないし










 休憩を終えたアカリは「黒の神殿」を進んでいた。


 「すごいすごい! 皆んなすぐに倒れる!」


 スキルを使用してから三十分もしてないが、軽く百体は倒しただろう。


 【スキルを獲得しました】

 【ソウル・イーター】

 効果:敵を倒した時に、確率で敵のMPの5%を奪い取る。確率はLUKに依存。

 MP:――

 取得条件:三十分以内に魂を百集める。


 「やったー新しいスキルだ! へへへー」


 アカリが栄えある二個目のスキルを手に入れた瞬間だ。


 それからもズンズンとフィールドをテキトーに進んでいき、一つの建物を見つけた。


 「んー? これが黒の神殿かな?」


 そんなことを思いながら足を踏み入れようとした瞬間に、カンッと身体が弾かれる。


 「あれー、入れないのかな?」


 何度か入ろうと試みると、十回目で結界が割れた。


 「やった、入れるみたい!」


 そうやって、後ろを振り返ることなく入って行くアカリは、背後で積み重なった哀しげな瞳に気付かなかった。

 そして数秒後、四肢を無くした敵達は、音もなく光となって消えていく。


 所詮、門番の十体や二十体、今のアカリの目にも入らないのだ。


 ふんふふーん、と鼻歌交じりにコツコツと足音を鳴らし、通路を進む。


 急に前方から矢が飛んでくることなど日常茶飯事。


 ヒュン……!


 と飛んできた矢だが、それは壁に突き刺さる。


 アカリにとってダークリザードマンよりも単調な動きの矢を躱すことなど、造作もないことだ。


 しかし。


 ガタっ……!


 次はゲームをあまりしたことのないアカリにとっては予想外の展開だった。


 「うぇえ! 何あの大きな岩!」


 必死で走って逃げようとするが、岩の方が速くあえなく撃沈した。


 噴水の前に戻ったアカリは、どうすれば岩の罠を抜けられるか考えていた。


 「うーん……あっそうだ!」


 何かを思い出したアカリは、メニューを開く。


 「えっと……えー! レベル30でMAX!? スキルポイントは150もあるよ!」


 レベルを見て驚いたアカリだったが、別段おかしいことはない。

 現段階では最強のステージで二百体以上のダークリザードマンを倒したのだから。


 「うーん……スキルポイントは一度振ると元には戻せないって栞莉が言ってたしなー」


 迷った挙句に「えい!」と、一気にスキルポイントを振った。


 アカリはVIT――生命力に30、DEX――器用に30、AGI――敏捷性に30、INT――知識に20、そしてSTR――力に40入れてしまった。

 STRではなくINTにスキルポイントを入れるのが一般的な魔導師だ。

 しかし、アカリにとっては殴打という戦術が楽しくなっていたため、「まあいっか」と残りをSTRに注いだのだった。

 また、ステータスが大体平等になるように、スキルポイントを振るというのは、初心者のさがだろう。


 HPはレベルアップと共に増えていったが、MPはINTに依存するのかもしれない。

 また、アカリがネットで調べるとMND――精神力というものもあるらしいのだが、精神力はVIT――生命力に依存すると思われた。


 「よーし! これで岩も躱せるかな?」


 そうして再びワープオブジェクトに向かって歩き出すのだった。






 【ステータス】

 アカリ Lv.30 【MAX】

 職業:黒魔導師

 HP:170/170

 MP:140/140

 STR:50 VIT:45

 DEX:45 AGI:50

 INT:70 LUK:777

 【装備】

 右手:木の杖

 左手:無し

 頭:冒険家の帽子 胴:冒険家の服

 腕:冒険家の手袋 腰:冒険家のスカート

 足:冒険家の靴

 装飾:なし

 スキル:【死者の王】【ソウル・イーター】


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