第2話 チートスキル手に入れて。

 アカリはあれから一ヶ月間、懲りずに毎日ダークリザードマンと闘っていた。

 しかし、いずれも勝つことはできなかった。

 手に入れたスキル、【死の宣告】をダークリザードマンに繰り出したところ、ダークリザードマンの頭上に【レジスト】という文字が浮かんだ。

 あまりにもレベル差や、スキルレベルの差があり、レジストをされてしまったのかもしれない。

 だが、負け続けることで、【死の宣告】は、【死への誘い】となり、現在は【死の狭間】へと進化をしていた。


 【死の狭間】

 効果:周辺のモンスターを高確率で殺すことができる。継続時間三時間。

 MP:50

 取得条件:敵を一度も倒すことなく千回死ぬこと。


 ここまで来ると、ダークリザードマンも倒せるのでは? と考えたアカリだが、MPが足りないため使いようがなかった。


 一応、MPが高いジョブである【魔導師】に変更したのだが、MPは40しかなかったため、【死の狭間】は使うことが出来なかった。

 また、それに伴ってSTR――力が0に下がり、INT――知力が20と上がった。

 これはジョブ補正であるが、力が下がったことでダークリザードマンの急所以外にダメージが通らなくなってしまった。

 それを受けて急いでジョブを戻そうとしたが、後の祭りだった。

 何故ならば、ジョブは一度決めたら元には戻せないのだから。

 そのせいで、負けに拍車がかかった。

 プレイヤースキルが上がったアカリが、ダークリザードマンの急所を狙うことは意外とできた。

 しかし、急所しか狙えないとなると、試合時間が延びてしまう。

 結果、もう一体のダークリザードマンと遭遇エンカウントして、結局負けた続けることになる。


 今日もまた百回ほど死んでしまい、土曜日の朝を無駄にしている。


 このままではダメだと思い、


 「絶対に二体来ませんように!」


 と、合掌して願ってから出発して、ダークリザードマンと闘い始めた。


 まだ二体目は現れない。


 (よし! 行ける!)


 九割減ったダークリザードマンの体力を見て、そう思った。

 しかしその時、背後からすごい勢いで迫って来る足音を聞いてしまったアカリ。

 その敏感になり過ぎた聴覚で、振り返らずとも間に合わないことが分かった。しかし……


 (あと一発、あと一発で倒せる!)


 一か八か、捨て身の攻撃を仕掛けた……。


 が、結局負けてしまった。目の前には、もう見慣れた噴水がある。

 しかし、嫌な気分はしなかった。なぜなら……


 【スキルが進化しました】

 【死者の王ロード・オブ・デッド

 効果:死は平等に訪れる。違うのは早いか遅いかだけだ。継続時間三時間。

 MP:100

 取得条件:敵を一度も倒すことなく一万回死ぬこと。

 運営からの一言:ここまでこのゲームを好きになってくれてありがとう! グッドラック!


 「やったー! ……あ」


 そのスキルを手に入れて歓喜の声を上げるアカリだったが、あまり大きな声を出すとまた怖い思いをすると思い、小さな声で喜んだ。


 しかし、このスキルを使うことはできない……そう思っていたのだが、なんとジョブが進化可能となっていた。


 アカリは迷うことなくジョブ進化をした。


 【魔導師から、黒魔導師へと進化しました】


 その頭に響く言葉に、嬉々としてステータスを開いて笑みを漏らす。


 「えっへへーまだ1レベルだけど、強くなった気がする!」


 そう。アカリは強くなってしまった。

 最後の最後に、二体目のダークリザードマンが出てしまったせいで……。

 それは、リアルラックのせいかLUKのせいか……。


 「うーん、とりあえずスキルが試せるから行ってみよ!」


 来たのは勿論、いつもの場所だ。


 「おー、今回は満月かー!」


 月のエフェクトは毎回変わるが、今回は満月だった。


 すると戦闘で研ぎ澄まされた目が、いつも以上にダークリザードマンの位置を知らせてくれる。


 「よーし、まずはあの子から倒そう!」


 そして始まるのは、まさに蹂躙劇だった。


 「【死者の王ロード・オブ・デッド】!」


 アカリがスキルを使うと、途端に髪色が変化して真っ白なショートヘアとなった。

 そして、アカリの周りには紫色の玉が舞っている。

 また、彼女の半径十メートル内の草木は枯れ、何一つ物音が無くなった。

 静寂が佇むフィールドに鳴る、ダークリザードマンの足音。


 「えー! なにこれー!」


 興奮しているアカリの声に導かれたにえが、その範囲に入った瞬間……。


 「グヘェ」と、変な声を上げて死んだ。その死体は頭の先が無くなり、断面から無数の光が舞い上がっている。


 あんなに苦労していたダークリザードマンが、スキルの力で溶けていく。


 それを見ていた一人の男が、自分に危険が及ぶ前にフィールドから出て行った。

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