最後の放課後

卒業式が終わり、最後のHRが終わった。

長いようで短かった高校生活が、終わりを告げる。

僕は最後の会話を噛み締める生徒達の中から、彼女を探す。

彼女を見つけるのは簡単だ、ショートカットが良く似合う輪郭、眩しい笑顔、動きの癖。

僕には見ればすぐにわかる。


背後から忍より、彼女の頭をポンっと軽く叩き、声をかける。

「おう」

「よっ」

彼女もそれが僕だとすぐにわかるようで、短い返事をする。

「今日は最後だし、一緒に帰ろうか」

3年になってから、二人で帰る事は少なくなっていた。

「うん、友達と話して行くから、待ってて」

「わかった、教室で待ってる」

彼女は少し不愛想に返事を返す、彼女の頭をポンポンと叩き、自分の教室に戻った。


教室に残っている級友は、各々名残惜しそうに最後の会話を交わしている。

「お!彼女待ちか?卒業しても頑張れよ!じゃーな!」

クラスの友人が囃し立ててくる。

彼らとも、今後会うことは無いのだろうか。

やがて一人、また一人と減っていき、夕暮れの教室には僕一人になった。


誰もいなくなった教室で、僕は彼女の事を待っている。

もしかしたら、もう来ないかもしれない。

何故かそんな事を考えてしまう。

僕の中の彼女の信用度は限りなくゼロに近い。


「どーん!ごめん!おまたせ!」

教室に飛び込んできた彼女は、その勢いで僕に抱きついてきた。

「おう、友達とは大丈夫?」

「うん!帰ろっか!」

僕といる彼女は友達と話してる時とは違ったテンションだ。

これは僕だけが知っている彼女の顔のはずだった。

「やっぱり髪短いのも良く似合ってるね」

少し前まで肩よりも長った彼女の髪は、今は出会った時のようにバッサリ切り落とし、

ショートカットになっている。

「そー?これ見たらみんなに別れたのって聞かれたよ!」

なぜか嬉しそうに答える笑顔は、3年前から変わっていない。

この先も何時までも、僕だけにこの笑顔を向けてくれてたら良かったのに。


「帰り何時ものところでアイス食べて帰ろ!」

「わかった、最後に寄って行こうか」


そうして僕達の最後の放課後が終わった。


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