きっかけはフクロウ(最終回)
ゆうけん
きっかけはフクロウ(最終回)
……そして、カタリは『至高の一遍』を求め、更なる旅へと歩み始めた。
小気味良くキーボードを叩き終わる。リビングへ向かうと、お姉ちゃんがカップラーメンを作っているところだった。
「三周年のお題コンテスト、最終日だけど出来た?」
「今、終わったところ~」
「今回のお題はなんだったの?」
「カクヨムのイメージキャラクターだったよ」
「トリ?」
「いや、あれはマスコットキャラクター」
たま~にしかカクヨムにアクセスしない姉ちゃんが知るわけもないな。
二周年記念企画で『新キャラクター、プロフィール募集コンテスト』があった。
私はそんなに興味がなく、告知をチラ見した程度だった。今回のお題になっていなければ、この先も詳しくは知らないままであっただろう。
「な~んだ。トリじゃないんだ」
なぜか、姉ちゃんは非常に残念そうに言った。
ハッ!これは!ついに!
ついに!姉ちゃんも
実に素晴らしい。最高だ!
「姉ちゃんも分かってくれたか。トリは良いものだと!」
キラリと目尻に涙を浮かべ、鳥信者が、また一人目覚めたことに喜びを感じていた。
「……ユウ。何か勘違いしてない?」
「え? 鳥類愛に目覚めたんじゃ……」
「やっぱ勘違いしてる。私はね。テーマが『トリ』だったらユウの暴走しまくる小説が読めると思ったんだ」
「……そ、そんな、暴走なんて。し、しないよ……多分」
「ふ~ん」っと言いながらスマホで確認し始める姉ちゃん。
「ああ、このキャラか。見たことある」
「公式のイメージキャラだからね。どっかで目にしてると思うよ」
「へ~。カタリとバーグっていうんだ」
「フルネームはカタリィ・ノヴェルとリンドバーグね」
「今すぐKiss Me~♪」
「姉ちゃんなら絶対それ言うと思った。でもリンドバーグといえばチャールズ・リンドバーグかな」
「……誰?」
「1927年に大西洋単独無着陸飛行を初めて成し遂げ、4年後には北太平洋横断飛行にも成功した偉人だよ」
「……やっぱり。トリ人間コンテストに憧れていたのね」
「違う。そうじゃない」
彼は更に、1935年には心臓病の姉の為に、人工心臓の開発を手掛け『カレル・リンドバーグポンプ』という現代の人工心臓の基盤を作った人なんだ。工学知識は飛ぶことだけに生かされるわけじゃないんだ。
……やめよう。きっとチャールズ・リンドバーグを熱弁しても、最終的には姉ちゃんのペースになってしまう。そう。言い合いになったら私はいつも勝てない。二人しか兄弟がいないから、いつも二番目なのだ。
そうだ。姉ちゃんに小説を書かせてみよう!
そうすれば、私の方が若干は得意分野のはずだ。
「姉ちゃん。話を戻すよ。カクヨムの10回目のテーマ」
ちょっと読んでみたい。姉ちゃんが描く世界。
どんな物語なんだろうか。
「えぇ~っとカタリとバーグだっけ?」
「そうそう。そのキャラを使って姉ちゃんも何か書いてみなよ! 紙とペンがあれば、今すぐにでも出来るんだよ!」
「あぁ~無理無理。私、小説のルールとか全然知らないもん」
「ルールなんて、あってないようなもの! 読み手に伝われば良いんだよ!」
「そういうもの?」
「そうだと思ってる。読んでくれる人に、わかりやすく伝わるのが一番だと」
文章力。この言葉の使い道は難しい。
辞書では「巧みでわかりやすく、面白い文章」とあるが、誰にとって、何が面白いかという部分が非常に複雑だからだ。
「ところでさ。ユウは知ってたの?」
ちょうど3分間で出来上がった、カップラーメンをすすりながら、姉ちゃんが問いかける。スマホで公式ホームページを見ている。
「皆勤してもトリ。もらえないよ」
「うぇえええぇえぇぇぇ!?」
まったく、私はなんておめでたい頭だったのだろうか。
あの、図書カードはいらないので、10cmキーホルダーのトリをいただけないでしょうか……。
きっかけはフクロウ(最終回) ゆうけん @yuuken
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