至高の一遍
僕がその少女と出会った時、僕は一遍の小説を読んで泣いていた――。
ここはカクヨムが作ったバーチャルオフィス。物質としては存在しない、仮想空間だ。僕は赤、白、青と様々な色のコードを身体につけて、この世界に意識だけ
僕の名前はカタリィ・ノヴェル。みんなにはカタリって呼ばれてる。ある日、フクロウみたいな謎のトリに「詠み人」として選ばれ、世界中の物語を救うことになった。物語を救う――それは誰しもが心の中に持っている、その人だけの
僕は最初、世界を飛び回って小説づくりに明け暮れた。僕一人じゃ、到底世界中のみんなが物語を忙殺するスピードに追いつけない(だって僕は地図が苦手なんだ)。そんな絶望を感じ始めた時、世界中の人々の心を救う究極の物語『至高の一篇』がどこかに存在すると知った。いや、正確には、今はまだ存在していないと言うべきだ。そう――その小説はこれから紡ぎ出されるのだ、カクヨム作者さん達が成長することによって――。
人々から紡ぎ出される小説はどれもこれも深い。読んで泣いてしまうこともしばしばだ。そんな小説を、物語を紡ぐことが好きなカクヨム作者さんに届ける。人の
僕はさっそくカクヨムに出向き、事情を伝えた。カクヨムの人たちはその伝説や僕のことまで知っていたので話が早かった。そういうわけで、僕はこのバーチャルオフィスにシンクすることになった。人から小説を紡ぐことは
僕はいつもどおりコーヒーマシーンの近くに陣取って、ルビー色のコーヒーを片手に紡いだ小説を詠み、不覚にもまた涙していた。その時だ。見知らぬ女の子がおずおずと「あのー、どちら様ですか? こんなところで何を?」と尋ねてきたのは。
それが彼女――カクヨム作者さん達を応援することを仕事とするAI、リンドバーグとの出会いだった。
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