私から君達へ伝えたいことがある。

宇部 松清

未来からの手紙

 カタリ、バーグさん


 この手紙を読んでいるそちらの世界の空は晴れているだろうか。

 こちらでは、ここ最近ずっと、雲一つない真っ青な空が広がっている。今朝も最高の目覚めだった。


 君達が小説投稿サイト『カクヨム』のイメージキャラクターとして生まれたのが2018年のことだ。ずいぶん昔のように感じられるよ。


 さて、私が筆を執り、こうして慣れない手紙なんてものをしたためたのにはもちろん理由がある。時空間メールが主流となっている昨今、紙とペンをもって思いを伝えるなんてことは、よほど酔狂なやり方と思われている。――いいや、私はこれはこれで粋だと思うのだがね。


 この手紙は君達が生まれたその1年後、つまりカクヨム3周年の3月29日に届くよう、送らせてもらった。どうだろう、ズレたりしていないだろうか。最近では時空郵便の方でもルールが少々変わって、〇年前、なんていうざっくりしたものではなく、何年何月何日ときっちり指定出来るようになったのだ。これはちょうど良いと早速飛びついてみたのだが、いやはや、やはり新しいシステムには常にトラブルがつきもののようで、指定日の前日やその翌日に届いたりしているらしい。過去の結婚式に祝電を送ったら、何と式が終わる直前にすべて届いたらしく、司会者は最後の3分間で大量のお祝いメッセージを朗読する羽目になった、なんて笑い話もあるのだとか。

 それは笑い話で済まされても、だ。これについては、数日のズレくらいならともかく、年単位でズレたりすれば大変だ。最も、そこまでいかずとも、せっかくのこのイベントに間に合わなければ、やはり何の意味もないわけだが。


 本題に入ろう。

 この手紙は私から君達へ、君達がさんざん気をもんでいたカクヨム3周年を経て、現在のカクヨムがどのような進化を遂げているかを伝えるためのものだ。ネタバレは禁止です! バーグさんならそう言いそうだが。まぁ聞いてほしい。


 結論から言えば、カクヨムはほとんど変わっていない。


 とはいえ、もちろん従来の機能の改善や新機能の追加など、そういう点においては進化していると言っても良いだろう。しかし、根本は何も変わっていない。『書く』そして『読む』というこの2点においては。

 生粋の読者にとって、何かを『書く』というのは、大変にハードルの高いものだと思う。しかし、それが『応援コメント』や、最大35文字の『レビューのひとこと紹介』だったら? まぁこれくらいなら、そう思ってキーボードに、あるいはタッチパネルに触れたなら、その瞬間から読者もまた『書き手』なのである。カクヨムが『ヨムヨム』でないのは、そのためだ。


 こちらのカクヨムはいま、100周年記念でそちら以上のお祭り騒ぎとなっている。登録人数も君達の頃とは桁外れで、少子化、などと言われていたあの頃が懐かしい。


 記念選手権ももちろん続いているよ。お題の数は31、締め切りはお題提示から24時間後だ。それでも現在のところ皆勤賞候補が500人もいるのだから、大したものだ。嬉しい悲鳴があちこちから上がっているよ。


 それではそろそろ〆させていただこう。

 何せこちらもまだイベントの真っ最中なのだ。

 先ほどからこちらのバーグさんが無言でにこにこと笑いながら私を見ている。そろそろ手伝いに行かねばならない。

 カタリ? ああ、彼は相変わらず物語の配達に大忙しだ。方向音痴はましになったかって? だとしたらそろそろ帰って来てくれても良いのだがなぁ。それでも一応気を遣って、「今日の配達は2件だけにしておきます」なんて言ってたはずなんだが。しかし「2番目の方のはちょっと特別なんですよ」とも言っていたから、その2番目の配達先で何かしらのトラブルがあったのかもしれない。それもやや心配である。


 ああ、わかったわかったバーグさん。いま終わる、いま終わる……ってここまで丁寧に書く必要はないわけだが。


 では今度こそ本当にさよならだ。

 

 

 カクヨム100周年の未来から、物語を愛する2人へ。トリより。




追伸:

 カクヨム3周年おめでとう!!


追伸2:

 カタリの2番目の届け先とは私のことだったよ。

 ずっと探していたシチュエーションラブコメの短編だ。

 あとでじっくり読ませてもらうとしよう。

 






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私から君達へ伝えたいことがある。 宇部 松清 @NiKaNa_DaDa

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